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『夜の街』連呼でやり玉に コロナ禍で再燃する「セックスワーク」への差別意識

2020/08/03
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合言葉は「合法化」ではなく「非犯罪化」

 女性セックスワーカーも女性なのだから、その労働環境向上や差別解消はフェミニズム的にも重要なはずだ。セックスワークを認めることは、女性の自己決定権を確立し、男性中心的な性規範からの脱却につながる。

 現在セックスワーカーの運動ではセックスワークの「合法化」よりも「非犯罪化」が合言葉となっている。合法化というと、例えば戦前の公娼制のように国に管理され自由のないものと混同されやすいので、それよりはまず犯罪とされている現状を批判している。

 それを受けてより具体的にどんな法制度があり得るのか議論が必要な段階だ。セックスワークの権利と女性の経済的自由は同時に目指されなければならないし、車の両輪なのである。

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セックスワーク論争で覆い隠されるものは何か?

 そもそもセックスワークを労働とみなすかどうかというのは擬似問題である。なぜなら、すでに多様な形態の性産業が世界中にあり、多くの人々が働いているのだから。むしろこの論争によって何が覆い隠されているのかを考えなければならない。

 SNS上でセックスワークの論争が炎上すると同時に、リアルな政治世界では都知事や一部の自治体、国が「夜の街」に警察を動員して、人々の目をそらしてコロナ対策の無策を隠そうとしている。これでは何の解決にもならない。

©️iStock.com

 都知事のみならずメディアも、「夜の街」という言葉の使用はすぐに止めるべきである。曖昧な差別的表現を繰り返す政治家の危険性に気づいてほしい。人々の不安に乗じて、マイノリティを敵に仕立て上げ、自分の権力に動員しようとするのはポピュリストの常套手段なのだから。

『夜の街』連呼でやり玉に コロナ禍で再燃する「セックスワーク」への差別意識

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