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 懇親会は基本的に幹部の姐さんが経営するスナックでの飲み会だが、ときにはゴルフコンペになったり、釣りに出かけて温泉宿で一泊するときもあった。馬鹿騒ぎをして楽しむ――幼なじみたちの集まりは、基本的に友達同士の遊び仲間だ。

 ただ彼ら昔の不良仲間たちにとって、本職の暴力団となった幹部は、一般人なら躊躇する暴力的な世界に生き、抗争を経験し、何度も刑務所にぶち込まれ、様々な意味で憧憬の存在として存在する。

暴力団員を支援する地域住民

 仲間内から出た幹部を、ヤクザ社会で名の通った男にしようと地元の幼なじみが団結し、これを支援するようになる。この段階で具体的な見返りは特にない。あえていうなら、暴力団と一緒に行動することで、その特権――繁華街を肩で風を切って歩いたり、周囲を威圧する優越感を味わったり出来るということだろう。あとは成長を支援することで得られる精神的な充足感だ。精神構造はファンクラブに近い。

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 同級生たちは懇親会の常連から、月に1万~3万円程度の会費を集めて渡し、幹部に会社を経営するようアドバイスし、姐さんのスナックに通い詰めていた。甲子園が行われれば野球賭博をして、幹部が胴元になる。これで暴力団は特段働くこともなく、月に20万~30万円程度の定期的な収入を得られる。

 地縁をベースにした支援グループが成長する過程で、元請けゼネコン業者が参加したり、異業種の社長が混じったりしながら、暴力団員個人を支える強力な基盤となっていくこともある。こうした関わり合いの中では、暴力団は警察が言うほどの害悪ではない。とりあえず、懇親会に参加しているカタギの社長たちにとっては善人であり、よき隣人である。暴力団を内部に抱え込んだ経済同盟が大きく成長すれば、暴力団員は他団体から自分たちを守る用心棒としても機能する。

指定暴力団は地元経済と切り離せない関係性だった

 懇親会の大きさは個々の暴力団のカリスマ性や人柄に左右される。地縁ベースだから隣近所の付き合いが希薄な大都市とは違い、圧倒的に地方都市が有利で、しっかり地域に根付いている。西日本に指定暴力団が多いのは、こうした生活基盤が深く地元経済に根を張っているからだ。

 盗難だけは多かった。銭湯で財布を盗まれ、2度目はメガネを盗られた。車上荒らしにも3度遭遇した。金目のものなど置いていないが、ステレオやハンドルを持ち去られた。