コンビニのトイレから出てこない
そのまま数時間、思い思いの時間を過ごし、帰る時間になりました。テントなどの片付けを済ますと、全員車に乗り込み、村を後にしました。
帰り道、夕方の6時頃、行きにも寄ったコンビニが近づいたので、再びここで休憩を取ろうということになりました。
買い物やトイレを済ませて、車に戻ると、また青木君の姿がなかったので、またトイレだろうと、買って来た物を食べながら待っていました。
村で取った写真を見返したり、気が付いたことなどを話し合っていると、気が付けば20分以上が経っていました。いくら何でも青木君が遅いので、様子を見に行こうとした時、突然パトカーのサイレンが聞こえて来て、コンビニの駐車場に入ってきました。
そのパトカーから警官が降りてきて、走りながらコンビニへ入って行きました。
驚いてその様子を目で追うと、警官はコンビニのトイレへと走っていったので、青木君に何かあったのかとコンビニに入って行くと、
「おい、開けなさい」
警官がそう言いながら激しく扉をノックしていました。
「こんな所にこんな落書きあったかな?」
「何かあったのですか。トイレには恐らく僕たちの友達が入っているのですが」
そういっていると、突然トイレの扉が開いて、中から何もなかったかのように青木君が出て来ました。
コンビニの人の話では、トイレの中から大きな声でわめき散らすような声が聞こえてきたので、怖くなって警察に連絡したとのことでした。
出て来た青木君は、僕は1人で静かに用をたしていただけですと言い、壊れた物もないようなので、警察官の方も少し話を聞いた後、すぐに帰っていきました。
青木君の様子も、ただ驚いたという感じで、特におかしな雰囲気でもありませんでした。
しかし、このコンビニの店員さんが、トイレの中を見ている時に、おかしなことを言うのです。
「こんな所にこんな落書きあったかな?」
どんな落書きだろうと見たところ「む」を変化させたような落書きでした。
終電に乗らなくてはいけないので、すぐに車に乗り込んで出発することにしました。その時、僕は、煤の様なもので青木君の服の背中が汚れていることに気がつきました。もしかしたら青木君は事件のあった家で昨夜寝ていたのかも知れない。コンビニでの一件もおかしいと思い、青木君に色々と聞きたかったのですが、帰りの時間を気まずく過ごしたくないと思って、何も聞きませんでした。
無事にそれぞれが帰宅し、また明日大学で会うことを約束してその日は別れました。