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元徴用工訴訟・日本製鉄の資産が今日から現金化可能に 「彼らさえ動けば……」原告側が語る“落とし所”

2020/08/04

 元徴用工訴訟問題がいよいよ未曾有の局面に入った。

 8月4日、元徴用工訴訟で被告となっていた日本製鉄(旧新日鉄住金)の韓国内資産の売却命令が可能となった。現金化へ一歩進んだことになる。

 そんな中、韓国でにわかに注目されているのが、韓国の鉄鋼大手企業「POSCO」だ。

2018年の最高裁判決後、会見する原告 ©AFLO

裁判所は売却命令を出すことができるように

 訴訟3件により差し押さえられているのは日本製鉄の韓国内資産はPOSCOとの合弁会社「PNR」の株式19万4794株、9億7300万ウォン(約8634万円)相当で、今回売却命令が可能となったのは、そのうちの1件、8万1075株、約4億537万ウォン(約3603万円)だ。「PNR」は還元鉄の供給と乾式ダストリサイクルを行う企業で、POSCO70%、日本製鉄30%の出資比率で2008年に設立された。日本製鉄は、234万3294株(約117億ウォン=約10億3000万円)を保有している。

 日本製鉄への公示送達(資産の差し押さえの通知書類)が届いたとみなされる8月4日0時が過ぎ、裁判所は今日から差し押さえられていた資産に対して売却命令を出すことができるようになった。

「(韓国の)POSCOが(日本製鉄が保有し、今回現金化の対象になる株式を)買い取るしかないんですよ。仮に中国企業に入札されるようなことがあれば厄介なことになります。

 日本製鉄が今のように一切、話し合いにも応じないのであれば、日韓請求権協定の経済協力金で設立した歴史を持ち、日本製鉄とは相互に株式を保有しているPOSCOがその責任を代理でとるという形をとればいい」

 元徴用工訴訟の原告代理人(三菱重工業関連)のひとり、崔鳳泰弁護士はさらりと言うのだが……。

©AFLO

日本の経済協力金を元に作られたPOSCO

 POSCOは、世界の鉄鋼生産ランキングで日本製鉄に続き上位に入るグローバル企業だ。その成り立ちは日本と密接な関係にある。1965年に締結した日韓請求権協定により韓国が日本から受けた経済協力金(無償3億ドル、有償2億ドル)を元に朴正熙大統領(当時)の肝いりで1968年に作られた。当時の名は、「浦項総合製鉄」。技術は日本の八幡製鉄所(現日本製鉄)などから導入したといわれる。

 当時は、韓国政府が7割の株を保有した国営企業だったが、2000年に民営化された。POSCOの名は、「浦項総合製鉄」の英語読みの頭文字をとったもので、2002年から現在の名称となっている。