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戦後も毒ガスの“後遺症”に悩まされてきた

 毒ガスを処分する際には、海に投棄されたり、地中に埋められたものもあり、その影響で大久野島は長らく環境汚染の問題を抱えてきた。国民休暇村を建設するにあたり、1961年に島内調査がおこなわれたときには、防空壕から大量の毒ガスが発見されたこともある。そしてその建設中も、土中に埋められていた毒ガスによって、作業員が被災する事故が頻発した。

 他にも、過去には土壌から環境基準を大きく上回るヒ素が検出されたこともあり、島内では現在も井戸水を使用せず、船で水を運び込んでいる。毒ガスの問題は、戦後75年が経つ今も、完全には解消されていないのだ。

三軒家毒ガス貯蔵庫跡。島内の“戦争遺産”には、こうした看板も多く設置されている
 

ウサギと歴史に触れられる島

 毒ガスを製造していた当時は、動物実験のためにウサギが飼育されていた。そうした過去もあってか、現在大久野島に多くのウサギがいるのは、動物実験用のウサギが逃げ出して野生化したからだという噂が、まことしやかに囁かれている。しかし、毒ガスの実験用に飼育されていたウサギは、戦後、毒ガスと共に全て殺処分されている。実際には、戦後島外から持ち込まれたウサギが野生化し、繁殖したのだ。

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 今はコロナの影響でいくぶん落ち着いていると思われるが、普段の大久野島は休日になると、多くの観光客で賑わいを見せる。ほとんどの観光客の目的は、ウサギだ。瀬戸内の離島で可愛いウサギと触れ合うのももちろん有意義だが、大久野島に来たのならウサギだけではもったいない。島には今回紹介したような砲台跡や貯蔵庫跡、また廃墟としても魅力あふれる発電所跡がある。青い海に浮かぶ島々を見下ろし、2~3時間かけて遺構を巡りながら、潮風を感じるのも心地よいだろう。

 
 

 基本的に建物内は立入禁止になっているが、近くまで行って、外から眺めることはできる。ありがたいことに、建物を説明する丁寧な看板が随所に設置されているので、事前知識なしで訪れても全く問題ない。

 小難しいことなど考えなくてもいい。廃墟や遺跡がカッコいいとか、写真が映えるとか、怖いもの見たさでもいいと思う。戦跡に直接触れてみて、毒ガスの島、地図から消された島を体感してみることに、損はないだろう。

 

撮影=鹿取茂雄