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2020/08/08

 さらに世の中は残酷なもので、7月初旬に九州を襲ったのが令和2年7月豪雨。豊肥本線と並んで九州屈指の観光路線であった肥薩線をはじめ、多くの路線が甚大な被害を受けた。久大本線にいたっては、2017年の九州北部豪雨で不通になった区間を1年かけて復旧させたのにも関わらず、またも橋梁流失するなど大きく被災してしまった。

 だからこそ、数少ない明るい話題の豊肥本線全線復旧が喜ばしい、ということなのだろう。運転再開に先立って、JR九州は被災現場の復旧の模様と試運転初日の2度に渡って報道公開。同社に聞いても、「なんとか明るい話題を提供して九州を盛り上げたい一念で……」。その気持ち、よくわかります……。

「正直、直せるのかな……」4年間に何があったか

 ところで、気になるのが被災路線はどのようにして復旧されるのか、だ。豊肥本線が被災したのは2016年。実に4年以上もかけて復旧にこぎつけた。その間、どのような流れをたどったのだろうか。

立野駅~赤水駅間。崩壊した山の斜面。土砂の下に線路が埋まっている(提供:JR九州)
復旧した立野駅~赤水駅間。治山事業が先行して行われた
同じく復旧した立野駅~赤水駅間。当初は線路も土砂に埋まっていた

 まず、ここまで“熊本地震で被災”などと書いてきたが、実際には少し正確性を欠いている。もちろん2016年4月の熊本地震で大きな被害を受けたのだが、同年6月に地震でゆるんだ山の斜面が豪雨によって崩壊。これによって瀬田〜立野〜赤水間は並行する国道57号ともども土砂に埋め尽くされてしまったのだ。災害後の被災状況確認は徒歩や列車の徐行運転によって行われるのが一般的だが、この豊肥本線ではそれすらままならないほどの被害だったという。豊肥本線復旧事務所の諸田勝也所長は「正直、鉄道として直すことができるのかと思いました」と振り返る。

鉄道会社だけでどうにかなる問題ではなかった

 大規模な自然災害ではほとんどがそうだが、豊肥本線でも被害を受けたのは鉄道施設だけではなかった。先述の通り、線路のすぐ裏手にそびえる山が崩れて線路も道路も一緒くたに土砂が埋め尽くした。