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収入65%減「それでも鉄道に希望はあるのか?」 熊本地震から復活したJR九州の“数奇な運命”

2020/08/08
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 極端に言えば、鉄道施設の復旧だけならば土砂をどけて線路を敷き直せばそれで済む。しかし、熊本地震では鉄道のみならず周辺の道路や山、住宅地なども含めて被害を受けており、鉄道会社だけでどうにかなる問題ではなかった。

「周辺道路も被災したため、国や県と一緒に工事内容を調整しました。効率的に復旧工事を進めるため、治山事業を先行してそれが完了してから当社の鉄道施設の工事に取り掛かっています。電気工事についても九州電力さんと調整して進めました」(JR九州広報)

 実際には地震から約1年後の2017年4月にJR九州が豊肥本線復旧事務所を設置、翌5月に熊本県によって崩れた山の斜面の工事や土砂の撤去などがはじまっている。線路の上に覆いかぶさった土砂の撤去は、県による斜面の安定対策が施されたことを確認の上で、同年11月に着手。それ以降、ようやく本格的な“鉄道の復旧工事”がスタートしたというわけだ。

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瀬田駅~立野駅間。線路とその下の道路にまで土砂がおよんでいる(提供:JR九州)
復旧した瀬田駅~立野駅間。

「代替ルートの検討もしましたが……」

 まず県による工事が先行して一定の安全が確保されてからようやく鉄道の復旧工事を進めることができる。ただでさえ山間部で急峻な山が迫る区間であるのに加えてこうした事情もあるがゆえ、足掛け4年という大工事になったのである。ちなみに、治山事業については鉄道施設の復旧工事がはじまっても続けられ、おおむね完了したのは2020年3月のことだった。

「この区間は代替ルートの検討も行いましたが、安全性や経済性などを踏まえて基本的に従来のルートのままで復旧することになりました」(諸田所長)

 その結果、豊肥線名物の三段スイッチバックも蘇ったということになる。が、もちろん完全に“もとに戻した”わけではなく、山側の斜面に安全対策を施したり、線路の勾配がわずかに変わるなどの変化もあった。さらに、排水機能を強化するなどより一層の安全性強化も行っている。