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浜崎あゆみが長い髪で胸を隠したジャケット写真

『LOVEppears』は、ダブルミリオンを記録した浜崎あゆみのセカンド・アルバム。上半身裸の浜崎が長い髪で胸を隠す、という衝撃的なジャケット写真が大きな注目を集めた。また、鈴木さんは「男性のファッションにも影響を与えていた」と話す。

『LOVEppears / appears -20th Anniversary Edition-』

「彼女が腰につけていたファーの“しっぽ”(ファーチャーム)は、男性のあいだでも流行ったんですよ。田舎だと悪目立ちしちゃうけど、渋谷の街だととてもオシャレでした。男性のファッションも90年代はダボッとしたカジュアルなスタイルが人気でしたが、浜崎さんのブレイクで彼女のマネをしたくてレディースの服を着る細身の男性が増えたんです。彼らはマルキューで買い物していましたね。浜崎さんは男女に人気で本当にカリスマ。敵なしでした!」

©清談社

どんなにハイブランドでも、あゆと“同じモノ”を

 当時の若者たちは、口コミで情報収集をしており「あゆが◯◯で買い物をした」というウワサがあれば、その店に客が殺到したという。ネットやSNSがない時代の情報交換だ。デビュー前から浜崎を担当しているスタイリストは「普段着はシンプル派。109から高級ブランド店まで歩き回って、好きなものだけをチョイス。納得のいくものを買ってます」と語っている(「non-no」2000年11月5日号)。

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「あの頃はモノの価値が重要な時代でした。とくに渋谷の女子高生たちは『あゆと同じDiorのサングラスがほしい』とか『あゆがしているカルティエのラブブレスがほしい』など、どんなにハイブランドでもあらゆる手段を使って“同じモノ”を買っていました。自分に似合う似合わないに関係なく、好きな芸能人と同じメイクをして同じアイテムを持つのがステイタスだったんですよね」

香港ツアーでショッピング街に現れ、トレードマークのサングラスをかけた浜崎あゆみ ©getty

 ここで言うあらゆる手段とは、社会問題にもなっていた援助交際やブルセラを指す。「治安の悪さも含めてオシャレの最先端、若者の街・渋谷でした」と鈴木さんは話す。

「僕はブランド古着屋を経営しているので、今のトレンドも意識して見ているんですけど、昔に比べると若い世代のブランドへの執着がなくなっている印象です。好きな芸能人と同じモノよりも、似ているモノならOKという感覚に思えます」

©清談社

 そして鈴木さんは、現代のファッション業界が苦戦を強いられている理由について、

「時代の変化はもちろんですが、今は安室奈美恵さんや浜崎あゆみさんのようなスバ抜けた“ファッションアイコン”がいないですよね。ファッション業界の進化やSNSの普及などで個人の好みが細分化されている印象です。時代が変わったとはいえ、彼女たちのようなアイコンがいるかいないかで、ファッション業界の景気は変わってくると思いますね。

 もうひとつは、最近の10代がファッションを“卒業”する早さ。僕らの世代は、10代でギャルファッションにハマると、20代半ばくらいまでは同じ系統の服を着続ける人が珍しくない。でも最近の10代では中学生でギャルになっても、高校生あたりで卒業するという子のほうが多いみたい。卒業サイクルの早さも、ファッション業界が苦しい理由かもしれません」