「医師と薬剤師が議論できる病院」であるべき
そこで 医師と薬剤師のそれぞれに「どんな病院が働きやすいか」を訊いてみたところ、揃って返ってきた答えは「医師と薬剤師が議論できる病院」というものだった。
医師は職制上のトップではあっても、あらゆる薬剤について専門的な知識を身に付けているわけではない。投薬量の指示を誤ったり、処方箋の記入ミスなどのヒューマンエラーを引き起こすリスクはつねにある。大切な患者に薬を使う以上、薬剤に特化した専門家として医療チームの業務を分担する薬剤師の意見には耳を傾けるべきであり、それができる環境が整っている病院が“いい病院”、ということだ。
そのためには、薬剤部のトップが医師や経営側としっかり対話できる人物である必要があるのだが、少なくともこのドラマで真矢ミキが演じる薬剤部長・販田聡子はそのタイプではないようだ。組織間の軋轢を嫌い、つつがなく業務を進行させ、自らの保身を願う薬剤部長。その下で、患者のために奔走する葵の姿が浮き彫りになる構図は、観る者にはわかりやすいのだが……。
ドラマでは「病院薬剤師の立場があまりに低すぎ」
ドラマだから多少の誇張は仕方ない。しかし、そうはいっても「そんなこと、あるわけない」という意見もある。内実を知る同業者にとっては、それを見つけるのも楽しみの一つなのかもしれない。
首都圏のある民間病院の薬剤部長はこう語る。
「病院薬剤師はヒエラルキーの中での立ち位置が低い――と誤解される場面が多過ぎる。“アンサング”(称賛されることのない)の意味を勘違いしているのでは?」
他にも、細かな指摘は数多い。
「エレベータに乗る序列に“患者優先”はあるけれど、医師や看護師が優先で薬剤師は階段を使う――などということはない。ウチの病院は医師がエレベータガールをやってくれる」
「患者急変時に薬剤師が当たり前のように胸骨圧迫をしているのはおかしい。院内なら医師や看護師がいるはずなので、あり得ない」
「過去の内服歴を調べるために業務時間内に患者の自宅まで行くシーンがあったが、薬剤師にそんな暇はないし、そもそも病院が外出を許すはずがない」
「病院によっても違うのかもしれないけれど、普通は救急外来に薬剤師は常駐していない。ただでさえ人手不足のはずなのに……」
「救急の場面で、医師や看護師よりも患者のそばに薬剤師が立っているのは違和感を覚える。たぶん邪魔です」
「調剤室は基本的に清潔でなければならないので、そこに入る薬剤師がキャップもマスクもしていないなんて……」
コロナ禍以前から、薬剤師に限らず病院スタッフの大半はマスク着用が原則だった。せっかくの石原さとみがマスクで顔を隠したのでは、ファンが納得しないのかもしれないが……。