その2)名前の知らない薬を「舐めて判別する」ことはあり得るの?
第2話では、薬を砕いて舐めて名前を当てるというシーンがあった。その際、新人薬剤師に「新薬が出たら、匂いと味を確認するのは当然でしょ?」と言い放つ。さらには、患者の家で発見した名前がわからない薬を、舐めて判別する場面も登場する。
これについては「危険だ」「すべきではない」という否定的な意見がある一方、「薬によってはやることがある」という薬剤師や、「薬の味を知った上で患者に指導してくれる薬剤師さんには助けられる」と好意的な意見を持つ看護師もいる。
「調剤見本や期限切れなどの余った薬で試すことがある 」(前出のA薬剤師)
「特に散剤、水剤、漢方薬、口腔崩壊錠などは服用時の味を気にする患者が多いので、薬剤師が味を知っておくことで役立つことはたまにあります」(同・B薬剤師)
「特に小児科では“薬剤の味”は内服のしやすさに直結する問題。ウチの病院の薬剤師さんはドラマのように味見をしているようで、患者やご家族に『ジュースで飲むと苦くなるんですよ』などと実践的なアドバイスをしてくれるので助かっています」(都内の大学病院の副看護師長)
決して患者が目にすることのないこうした薬剤師の努力が、ドラマによって広く知られることは悪いことではない。
その3)病院薬剤師(石原さとみ)と調剤薬局の薬剤師(成田凌)の違いは?
意外に知らない薬剤師という仕事。その資格を取得するのは結構大変だ。
以前は4年制の薬学部を卒業すると薬剤師国家試験を受けることができたが、2006年から薬学部は医学部と同じ6年制に変更された。しかも学費はびっくりするほど高い。私学の薬学部に6年間通うと、トータルで1000万円を軽く超えていく。
そのため奨学金を利用する薬学生は多く、卒業後は返済のために給料の安い病院(「時給換算すると看護師より安い」という声も)には入職せず、調剤薬局や町のドラッグストアを選ぶ薬剤師が多くなる。結果として病院の薬剤部は慢性的な人手不足に見舞われ、今いるスタッフは激務の連続となる――という負の連鎖だ。
このドラマでも、奨学金返済のためにドラッグストア「ナカノドラッグ」に勤めている薬剤師・小野塚綾が登場し、成田凌が演じている。小野塚は、働き始めたころは熱心に勉強していたが、日々の忙しさから理想と現実の間で悩んでいる。
前出のA薬剤師は語る。
「病院薬剤師は当直もあり、24時間体制で働いています。しかし、院内での勢力は小さく、同じ人員不足でも他部署の対策が優先されがち。そもそも少数勢力なので、声を上げても中々上層部には届きにくいのです」