記録映像を織り交ぜて構成した理由
――当時の記録映像もいくつか挿入されていますね。ブシェッタがブラジルからイタリアへ戻ってきた場面では、彼が飛行機の外に出る瞬間、画面は実際のニュース映像と切り替わります。一方で裁判での映像はすべて俳優たちが演じています。どこでどの記録映像を使うか、その判断はどのようになされたのでしょうか。
ベロッキオ ブシェッタに関しては実際の記録映像を2回使っていて、その1回が飛行機から降りてくる場面です。実は俳優を使って一度このシーンを撮ってはみたのですが、歴史的重要性という点から見ても記録映像を使った方がいいと考え、そちらを使うことにしました。記録映像自体がとても魅力的だったことも大きいですね。映画の最後に入れた、パーティーでブシェッタ自身が歌っている映像は、ドキュメンタリスティックに映画を終わらせるために使いました。その前に、ブシェッタを演じたピエルフランチェスコ・ファヴィーノが同じ歌を歌うシーンも入れています。同じ場面の2種類の映像を用いることで、フィクションと現実とのつながりを示して映画を終わらせたかったのです。大裁判の映像は資料としてたくさん参照しましたが、そのまま使うよりもそれをもとに自分たち独自の映像を作ったほうがよいと考え、裁判シーンではすべてフィクションとして描きました。
それから途中、ネズミが大量に出てくる映像があったのを覚えていますか。これは編集の段階で加えたものですが、ネズミと人間たちの行動が重なり合って見える、そういう効果を考えて使いました。昔のソ連映画で使われていたモンタージュ手法でもあります。
――ありがとうございました。次回作は『夜よ、こんにちは』でも描いた、1978年の赤い旅団によるモロ元首相誘拐事件を題材にしたテレビドラマシリーズになるそうですね。どのような作品になるのかとても楽しみにしています。
ベロッキオ 物語の描き方は、映画とは大きく異なるものになるでしょう。テレビシリーズは初めての経験ですが、新しいものには常に興味がある。ぜひ挑戦したいと思います。
Marco Bellocchio 1939年、イタリア生まれ。監督作に『ポケットの中の握り拳』(65)『肉体の悪魔』(86)『眠れる美女』(12)など多数。2011年にヴェネチア国際映画祭名誉金獅子賞を受賞。
INFORMATION
『シチリアーノ 裏切りの美学』
https://siciliano-movie.com/
取材・文 月永理絵