昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

フジテレビ「ラストドクター」……医療番組の「演出」はこれでいいのか?――青木るえか「テレビ健康診断」

『日曜THEリアル!・~ラストドクター その命を救えるのはあの人しかいない』(フジテレビ系)

2020/08/23

 裏が半沢直樹でヤケになってたのか、と思ってしまったフジテレビの『ラストドクター その命を救えるのはあの人しかいない』。医療情報バラエティなのだけど、テレビ東京で『ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告~』ってドラマを5年ぐらい前にやってなかった? フジのドクターは、神業で患者を助ける「最後のドクター」、テレ東は、死体を解剖して死因を暴く「最期のドクター」なんだが。監察医のほうが先にラストを名乗ってるから、今回のラストも「死体関係?」と思われないか。5年ぐらい前のテレ東の連ドラなんてフジテレビには「なかったこと」なのか。

 それはいいとして、この『ラストドクター』、難病の人(実在)が取り上げられ、「医者にも見放され絶望してる患者とその家族のもとに現れる名医によって助かる」のだが、こういうものをバラエティにしていいんでしょうか。

©iStock.com

 実在の元患者さんと家族と「ラストドクター」ご本人たちのインタビュー、俳優の再現VTR、そしてなぜかアニメがちょろっと混じる(このアニメが、絵はともかく、動きがカクカクしていて「昔の地方局のローカルCMアニメ」みたい)。で、女子高生の脳動脈瘤、胎児~乳児の心臓疾患、壮年の医者が冒された悪性腫瘍が描かれる。

 どんな病、たとえ水虫であったって、命をおびやかされそうとなったら、ハッピーエンドであれ悲劇であれ「ものすごいドラマ」になりうる。でもそれってあくまで「その人(およびそばにいる人)にとっての重大事」でしかない。それで万人の心を動かすためには「演出」が必要である。

 それがこの『ラストドクター』では再現VTRとスタジオの朝日奈央や河合郁人やチョコレートプラネットが(この人選も微妙)「きっついなー!」「うわー」「ムチャクチャかっこいい~」とか叫んだりするというのでは……。たいへんな難病でたいへんな難手術だというのは頭でわかっても「バラエティの世界のお約束」みたいにしか見えなくなってくるよ!

 ここで思い出すのは、NHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』だ。当欄でも取り上げた。先日の京都「安楽死」事件でも、亡くなったALS患者の女性がこの番組を見ていたと報道されていた。人が自ら死を選ぶまでの、本人と家族に淡々と密着したすごい番組だった。あの「淡々」こそが「演出」だと思う。ヤラセとか騒ぐことが「演出」なのではない。

『ラストドクター』を見て思った。この調子で、スイスの安楽死施設を扱ってみたらどうだ。「そんな重いことをこんなふうにはやれませんよ」と制作者は言うかもしれないが、そうしたらこの番組の患者たちは「軽い」のか。

INFORMATION

『日曜THEリアル!・~ラストドクター その命を救えるのはあの人しかいない』
フジテレビ系 8/2放送
https://www.ohk.co.jp/data/3822/pages/

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー