不動産政策での失敗で怒り爆発
文政権離れが起きている原因としてまずあがるのが、7月に詳報したように、ここ数カ月間くすぶり続けている不動産政策での失敗だ。ソウル市のマンション価格は文政権に入ってから52%も上昇したといわれ、不動産政策が20回以上施行されたにもかかわらず、政策が打ち出されるたびにマンション価格は逆に上昇。
家を持ちたいのに持てない、借りたいのに借りられない30、40代の間で不満が膨らんでいたが、7月にはマンション保有者への税金を増額し、今度はマンション保有者からもブーイングがあがった。こんな状況にもかかわらず、8月10日、文大統領は「過熱現象を起こしていた住宅市場が安定化し、(マンション)価格の上昇の勢いは沈静化の気配を見せ始めている」(朝鮮日報、8月10日)と発言し、非難囂々となった。
しかし、なぜ湖南という地方で支持離れが起きたのか。前出の中道系紙記者はこう解説する。
「ソウル市民の不満はいうまでもありませんが、ソウルのマンション価格だけ高騰している現象に地方は疎外感を覚えています。また、湖南地方を襲った水害でいち早く動いたのは野党だといわれていて、そんなところから不満が膨らんだのではないかと見られています。
ただ、今回の与党離れは不動産政策や水害での失敗だけが原因ではない。大統領も与党も4月の総選挙での与党圧勝に酔って、与党代表が漏らした『進歩政権50年』という言葉にあらわれていたように、まるで未来永劫、今の政権が続くかのように錯覚してしまった。その傲慢ぶりに国民の不満が爆発したんです」
昨年夏から続いている検事総長いじめ
4月15日に行われた総選挙で与党「共に民主党」やその衛星政党が国会の総300議席中180議席(除名などもあり現在176席)を獲得し、スーパー与党となったのは周知のとおり。当初こそ、謙虚な姿勢を口にしていたが、6月から開かれた現国会では野党の協力が得られなかったとして、国会内の常任委員長職18人すべてを与党議員で固め、批判の矢が飛んだ。さらには、昨年夏の曺国前法相事態から続いている尹錫悦検事総長いじめが度を超してきていて、これには支持層からも疑問の声が上がり始めている。
尹検事総長は、朴槿恵前大統領時代に左遷されたが、崔順実による「国政介入事件」で第一線に復帰。文政権に入ってからは「積弊清算」で朴前大統領周辺を起訴に持ち込み、昨年7月、検察トップに任命された。しかし、曺国前法相の捜査でその手を緩めることはなく、“敵”とみなされ、露骨に検察からの追い出しが図られていると言われている。与党の尹検事総長憎しの感情はこんな与党議員の失言からも読み取れる。
「飼い犬(尹検事総長)が主人(政府)を噛んだと同じこと」(8月18日、中央日報)