「光復節」という韓国の重要な国の行事で保守VS進歩の構図がこれほど浮き彫りになった年もなかったかもしれない。
8月15日、韓国では、「植民地から解放された光(国の主権)」を取り戻したとされる「光復節」だった。しかし、今年、話題になったのは、文在寅大統領の演説よりも過去の親日派(日本に協力したと見なされた人物)と現政権の失政などを巡る保守と進歩のくんずほぐれつの対立だ。
対日関連についても演説で触れたのは徴用工問題のみ。「司法部の判決を尊重する」という従来の立場を繰り返し、「いつでも日本政府とテーブルに着く準備はできている」としながらも、踏み込んだメッセージはなく、実にあっさりしたものに感じられた。
それもそのはずか。文政権は韓国内の問題でがんじがらめになっている。
8月14日、下がり続けていた文在寅大統領の支持率はさらに急落。39%にまで落ち込んだ(世論調査会社「韓国ギャラップ」)。岩盤層といわれる支持率40%を割ったのは昨年10月、曺国前法相事態以来のことだった。
与・野党の支持率が逆転するという世論調査結果
「K防疫」と自ら誇った新型コロナ対策で5月には71%の支持率を記録し、「レームダックのない稀有な大統領になるかもしれない」と夢のように囁かれたのも束の間。3カ月で32ポイントも下落した。
さらに衝撃が走ったのは8月17日。与・野党の支持率が逆転するという世論調査結果が出ると、汝矣島(韓国における「永田町」)をはじめメディアも騒然となった。野党第一党の保守「未来統合党」の支持率(36.3%)が与党「共に民主党」(34.8%、世論調査会社「リアルメーター」)を上回ったのは2016年10月以来、3年10カ月ぶりだ。世論調査会社関係者は言う。
「今回の与・野党の支持率逆転が起きた背景には、与党に嫌気が差した中道層と30代からの離脱が見られたことがあります。しかし、さらに深刻だと見られるのは、湖南での支持離れでしょう」
湖南は韓国の南西部にある全羅道地域を指し、金大中元大統領のお膝元といわれる進歩の牙城だ。中道系紙記者は支持離れを「湖南から与党への警告」と表現した。