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「ニセモノなんじゃないか」中国残留婦人たちとの亀裂

 臼杵氏は「中国残留婦人たちが元慰安婦なのかは、ヒアリングをした経験がないのでわからない」という。

 だが、ナヌムの家にとって元慰安婦が多く入所しているということが重要であるのは事実だ。寄付金や補助金を得られるだけではなく、政治家や著名人からも多くの支援の贈り物が届けられるなど、施設としてのステータスを維持するのにも繋がる。韓国内ではナヌムの家は人道的施設であり、教育の場でもあるとされてきた。

 そうした中で、中国残留婦人たちの背景に疑問を持つ元慰安婦も少なくなかった。ナヌムの家内でも、夜な夜な元慰安婦間で口喧嘩に発展することがよくあったという。

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 前述の沈美子氏も「中国から連れてこられた慰安婦は偽物なんじゃないか」という意識を強く持っていたとされており、訴状にあえて「偽物」という言葉を入れた理由の一つになったとされている。

沈美子人権回復抗議運動の様子(著者提供)

ロッテ製菓でアイスクリームを担当していたミーハー所長

 ナヌムの家の歴代所長も問題のある人物だった。初代所長は曹渓宗僧侶であった慧眞(ヘ・ジン)氏という人物だった。イケメン僧侶でもあった慧眞氏だったが、女性問題で告発を受け引責辞任し、その後アメリカに逃亡してしまう。

 次期所長となったのが安信権(アン・シングォン)氏だ。安氏は公募によって選ばれた人物で、ロッテ製菓でアイスクリームを担当していたという変わり種だった。所長になってからは「慰安婦は性奴隷被害者と呼ぶべきだ」等、慰安婦問題の論客として数多く発言をしてきた。

「ただ彼は挺対協のように頑なタイプではなく、ミーハーというか人間的にはフランクな部分がありました。寄付金集めのためにミスコリアの審査員をしたりして、挺対協から猛批判をされたりしていた。

 あるとき日本・外務省のアジア地域政策課担当官と安氏が極秘裏で会合をしたことがありました。日韓最大の問題となっている慰安婦問題で率直に意見交換をしようという趣旨の会合でした。ところが安氏が、ネットに会合の事実を書いてしまい、外務省は大慌て。その後、会合自体がなくなってしまいました」(臼杵氏)

 安氏はナヌムの家の不正流用疑惑の責任を取る形で、事実上の解雇処分を受け、同所を去っている。