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人権の為だったはずの施設が……食事は質素、医療体制は不十分
臼杵氏はナヌムの家を訪れる度に、福祉施設としての不備を感じていたという。食事は肉が少ない質素なものが多く、味も決して良くない。看護師が一人常駐しているだけで、医療体制としては万全といえない。シャワーのみしかない風呂場も、冬の寒さが厳しい韓国では寂しすぎる設備だといえる。
「フォローアップで見ていたBさんというハルモニもナヌムの家にいました。彼女を訪ねるとベッドに縛り付けられており、Bさんに『なんとかここを出してくれ!』と何度も懇願され、私も事情がわからず困惑したことがありました」(臼杵氏)
前出の官民合同調査団は、ナヌムの家の不正流用疑惑を指摘するとともに、元慰安婦に対する虐待の事実なども報告している。
人権の為だったはずの施設は、いつからか寄付金に目が眩み私利に走り、元慰安婦を蔑ろにするようになってしまった。戦争に傷つき、反日の為に利用されるーー。
慰安婦問題の悲劇的な二重構造を、ナヌムの家はわかりやすく体現した組織だともいえるだろう。
<引用出典>勝山泰佑「海渡る恨」(韓国・汎友社、1995年)