検査所を出ていきながら時計を見たら2時55分。韓国が「世界標準」を狙っている“K防疫”の代表的なコンテンツ、「ウォーキングスルー」PCR検査は25分も経たないうちに、すべてが終了した。
さらに、「検査結果は陰性」との保健所からのカカオトーク(SNS)のメッセージで届いたのは、翌日日曜日の午後12時30分だった。保健所からの突然のメッセージから丸一日で、ひとまず不安を解消することが出来た。
コロナ拡大で文政権の支持率は「急騰」
ただ、韓国全体をみると、新型コロナウイルスの感染が再び拡大している。8月第2週から感染者が大きく増え、8月14日から1週間は3桁の感染者が発生。21日からは毎日300人を超える感染者が判明している。
今回の拡散は、人口1000万の首都ソウルや人口1300万の京畿道など、首都圏で集中的に発生していて、感染者のうち、20%以上が感染経路の分からない感染者だ。
韓国防疫当局の見解では、このまま感染拡大が続けば、2月の大邱・新天地教会で始まった集団感染当時よりさらに深刻な状態になるという。
韓国の防疫当局は現在、全国の防疫レベルを「ソーシャルディスタンスの第2段階」へと格上げしている。第2段階の措置として、筆者が教会で礼拝した3日後の8月19日からは、屋内50人以上、屋外100人以上の集会禁止で、国公立施設が全面閉鎖された。ネットカフェ、クラブ、ビュッフェレストランなど12の高危険施設についても営業が全面中止。もちろん教会は対面礼拝が全面中断された。防疫当局は、「現在の拡散傾向が続くなら、9月からは第3段階に格上げを検討している」と明らかにした。
ただ、この危機状況の中で、文在寅政権の支持率は急騰している。
文政権はこのところ、与党関係者らのセクハラ事件、不動産価格の急騰、慰安婦問題の不正疑惑などに苦しめられ支持率が急落していたはずだった。しかし、「第1波」の危機で見せたリーダーシップが韓国国民の信頼を得ているのだろう。政権に不利な話題を、コロナが飲みこんでしまった。文在寅政権を苦しめていたすべての悪材料が、コロナの再拡散によってマスコミから一時に消えてしまったのだ。
コロナ拡大は「教会」のせい?
それと同時に、支持率回復に効果を発揮しているのが、コロナ拡散の責任を「サラン第一教会」(ソウル市城北区)と反政府デモに参加した保守団体に負わせて、猛攻撃する戦略だ。
「サラン第一教会」では、信徒4000人のうち800人を超えるコロナ感染が発生し、「第2の新天地教会」という非難を浴びているが、文政権が攻撃しやすいのは、サラン第一教会と同教会のチョン・グァンフン牧師がこれまで反政府運動の先頭に立ってきたからだ。
チョン・グァンフン牧師は、コロナに感染したサラン第一教会信徒の「濃厚接触者」にもかかわらず、防疫当局の自宅隔離の指示を無視して8月15日に大規模な反政府集会を強行し、教会信徒も大挙参加した。チョン牧師は集会後にコロナ感染が確認された。 そのことから、「反政府集会がコロナを拡散させている」と、受け止められている。