開くべきか、止めるべきか、それが問題であった。
7月初頭から開催が予定されていた、3年に1度の国際アート展「ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW−光の破片をつかまえる」のことである。
世界各地から計67組のアーティストを集めた展覧会が構想されていたのだが、コロナ禍の中、アーティストが来日して設営することもままならない。開催か、いっそ中止なのか。主催者は難しい判断を迫られたものの、予定より2週間遅れで開催へと漕ぎ着けた。
日時指定予約制をとり、マスク着用などを徹底したうえで、これまで来場者を迎え入れてきたのである。
ではさて展示の内容がどんなものかというと……。
「体感する作品」が続々と
今展は、横浜美術館と「プロット48」というスペース、それに日本郵船歴史博物館を会場にしての開催となっている。
会場にも所狭しと作品が並んでいるのだが、出品する67組の中に、現代美術の世界のビッグネームはさほど見当たらない。
アーティストのネームバリューで釣るというよりも、実際に会場で作品と出逢って感得するものを大切にしてもらいたい。そんな思いに溢れているのだ。
この展示のコンセプトを決めて、プランをつくり上げたのは、「ラクス・メディア・コレクティヴ」というインド出身アーティスト3人組である。
作品との直接の出逢いを大切にする姿勢は、壁に掲げられた作品解説のキャプションにも現れており、そこには詩的で抽象度の高い文章が書かれているだけ。作品についての直接的な説明は、ほとんどしない方針なのだ。まずは作品と接してもらい、「こういうことを表しているのかな?」などと観る側が想像力を膨らませていってほしいとの考えによる。
出品作は全体に、ビジュアル・インパクトの強いものが多い。たとえば、横浜美術館の会場へ入るとすぐに目に飛び込んでくる、ニック・ケイヴ《回転する森》。
天井から吊るされている無数の装飾物は、アメリカではポピュラーな「ガーデン・ウィンド・スピナー」と呼ばれる庭飾り。クリスマスツリーのオーナメントだけを掻き集めたかのようで、キラキラと目に眩しい。
飾りの一つひとつは大振りかつ派手でいかにもアメリカらしい。が、よく見ると中には銃をかたどった飾りなども混じっている。社会が抱える複雑な問題が、日用品にこそ色濃く現れるのだと知れる。