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2度目の辞任会見 疲れ切った安倍首相、13年前と比べると悔しくなさそうに見える?

臨床心理士が言葉と仕草を分析する

2020/08/30

genre : 政治

note

長期政権こそが一番の結果であり功績

「辞めていく私があまり注文をするべきではないと思います」

 次期政権、次期総裁について問われると首相はこう答えた。会見中、何度も“辞めていく私”という表現を使う。辞める私ではなく辞めていく私。次の総裁決定まで首相を続投するのだから、辞めていくという未来形は正しい。だがそう表現することで、総理という職への未練がまだあるようにも感じられる。また“あまり”という言葉を用い、総裁選への影響について聞かれた際も影響力の行使は考えていないと答えながら、「そうすべきでもないだろう」と曖昧な表現も用いた。全く影響を与えないとは言い切れないということだろう。

「国民の皆さま、8年近くに渡りまして、本当にありがとうございました」

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“7年8カ月”、“この8年近く”と、首相は在職期間を何回も口にした。8月24日に、第2次安倍内閣発足から連続在任期間が歴代最長2799日を達成。この長期政権こそが、安倍首相が出した一番の結果であり功績であろう。辞任会見の発言の締めに、安倍首相が8年という数字をわざわざ用いたのは、そこを成果として強調したかったからだろうし、国民にもそう思ってもらいたかったからだろう。

2020年8月29日新宿にて ©️AFLO

“終わりよければすべて良し”という言葉があるが、安倍政権は2度ともそうはいかなかった。それに前回の辞任前は参院選の惨敗、今回の辞任前はモリカケ問題にコロナ禍の対策への批判と、支持率は低下しイメージも悪化していた。歴代最長を達成したとはいえ、安倍首相本人にとっても本意ではなかっただろう。

 人には、もっとも感情が動いた時と出来事が終わった時の状況でその出来事を判断するという“ピーク・エンドの法則”があると言われる。今後、おそらくこの法則に影響されながら、安倍政権の歴史的評価は決められていくだろう。

 公明党の山口那津男代表はマイクを向けられこう語っていた。「7年8カ月続いたこと自体が大きな功績だと思っています」と。

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