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モーリー・ロバートソンさんの「テレビ業界への意見表明」で考えたこと

そりゃ衰退しますって、日本のテレビ局は

2020/09/05
note

論点1. ワイドショーのような情報制作で世の中を無理に動かそうとするな

 一連のコロナウイルス対策でもテレビ報道はさまざまな形で国民に情報提供をしてきて、もちろんそれが役に立った面はあるのですが、一方で、明らかにコロナウイルスのような感染症の専門家ではない、また、公衆衛生の知見もない人が単に「医師」や「研究者」という肩書一丁で出演して、非常に偏ったコメントをしている例が散見されます。

 代表的なのは白鷗大学教授で公衆衛生の専門家として多くの番組に出演してきた岡田晴恵さんで、中でも「コロナウイルス、高温多湿と紫外線が大嫌いですから、下火にはなって来ると思うんですね」と与太を飛ばし、医療界隈で大変な騒ぎになったのは記憶に新しいところです。放送にはファクトチェックが大事とか言っている場合ですらない。そもそもガセネタですから。

 さらに、テレビで稼げると思ったのかは分かりませんが、今度は大手芸能事務所のワタナベエンターテインメントが岡田晴恵さんのマネジメントまで進出しています。タレントとしての面白味があると思ってのことかも知れませんが、無理に煽らず正しい情報が必要とされるコロナ関連の話題において、テレビ局が正確性よりも話題性を重視して起用し続けるのであるとすればそれはヤバいわけです。

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(写真はイメージ) ©️iStock.com

知識のないタレント・芸人の不確かな感想で番組作り

 そして、ワイドショーなど情報制作の番組でありがちなのは、時事問題を取り扱っているにも関わらずバラエティ的に放送することで視聴者に情報を届けることが「あたりまえ」になってしまっている傾向です。一般人の気持ちを代弁するとの建前の元、知識のないタレントや芸人が不確かな感想ばかりを流して話題を消化しているだけであるという。

 コロナウイルス関連の報道がようやくお茶の間で飽きられたと知るや、自民党総裁選が行われることが決まってからはこのニュース一色になっていきます。 岸田文雄さん、菅義偉さん、石破茂さんら、立候補する3人のプロフィールやエピソードなどを順繰りに流し、それについて出演者が感想を述べるだけで番組が成立してしまうという程度の低さで、さすがに「この品質の情報しか流れていなくても良しとする視聴者しかテレビを観なくなるだろう」というモーリーさんの危惧は当たってしまいかねません。

 一事が万事そのような番組の作り方で各局横並びで、どこより数字を取った、取られた、と競っているため、テレビ以外の娯楽に視聴者が流れ、視聴習慣を失ったらもう終わりです。その危機感はテレビ局にもあるのでしょうが、ネット放送も含めて別のゲームチェンジャーが若い視聴者をテレビの前から根こそぎ奪ってしまった後でどうにかしようと言ってもなかなか無理です。