文春オンライン

モーリー・ロバートソンさんの「テレビ業界への意見表明」で考えたこと

そりゃ衰退しますって、日本のテレビ局は

2020/09/05
note

論点2. 「番組で取り上げられました」を誘発するステルスマーケティングをやめろ

 さらには、露骨に商品やサービスを番組で取り上げることで、安易に尺を埋めるロケをやる機会が増えているように思います。というのも、最近は戦略PR会社がかなり積極的に「この番組で御社の商品を紹介しませんか」ともちかけ、資金が動いているにもかかわらず番組内では広告と銘打たないという明確なステルスマーケティングが横行しています。

 実際、リサーチの仕事をやっているときに戦略PR会社や広告代理店など複数の会社から「番組で御社の商品を取り上げてもらうための広告予算を出しませんか」という提案は頻繁にやってきます。これ、明らかに広告営業ですよね。しかも、広告とは銘打たないタイプの。

 番組制作費が厳しくなり、出演している人たちのギャラが削られるという話題がよく出る一方で、こういうところで番組がおカネを作り、制作費を捻出しているのだとすれば涙ぐましい努力だとも言えます。が、しかし、これらは単純に景品表示法違反、放送法違反であって、割り当てられた営業枠を超えて通販をやってはならないという縛りすらも逃れるアプローチになっていて問題ではないかと思うんですよね。「あの番組のコーナーは800万円のスポンサー料で枠が買える」という話がいまだに出るのは都市伝説ばかりとは感じられず、さすがに襟を正すべき状況にあるのではないでしょうか。

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(写真はイメージ) ©️iStock.com

偏った政治報道も同様

 翻って、放送の中立性という観点からもテレビ局が積極的に特定の政党を応援したり、政治的に誘導するのは許されることではありません。しかしながら、私も石破茂さんとは政策勉強会をしたり対談などもやらせていただいていて親しいと思われているのか、番組で石破茂さんをどんどん取り上げたいので石破茂さんのエピソードを教えてくださいと取材されます。

 そして、実際に放送された番組を観ていると石破茂さんが自民党の改革者であり野党政治家や左翼系活動家とも渡り合える人物だという形で報じられており、客観的に見ても「党員投票などが行われない公平ではない自民党総裁選で落選させられる石破茂は可哀想だし、菅義偉さんが仮に総裁選に勝っても正統性はない」とでも言いたそうな内容に仕上がっています。あまりにもダイレクトすぎてびっくりするわけですが、ステルスマーケティングであれ偏った政治報道であれ問題は同根で、作り手の意志が不公平な形で反映され過ぎていたり、不適切な収益に直結するような番組作りはよろしくなかろうと思うわけです。

 別にすべての情報バラエティをNHKスペシャルや海外ニュースメディアのように仕上げろと言いたいわけではないのですが、作り手のモラルと番組の品質の問題はもっとしっかり考えなければなりません。