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軌道修正できない日本の護送船団方式

 本稿については蛇足ながら、そもそも我が国のメディアの構造においては、かねて指摘される新聞社系列としてテレビ局・ラジオ局が経営をされていて、戦後経済体制の病理でもある護送船団方式がいまなお色濃く生き残っています。

 テレビの番組制作に造詣のない新聞社のお偉いさんがテレビ局の経営中枢に天下ってきて専横したり、番組の中身に直接介入するなどの問題を引き起こして各メディアの独立性や独自性が毀損しています。クロスオーナーシップが認められていて、メディア産業がコングロマリット化しているのは日本のメディア界隈の特徴とも言えますが、うっかり経営が安定してしまっているので変革が求められているところでちっとも軌道修正が効かないのですよ。

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 もしも、テレビ局が資本でも人事でも独立した存在であったならば、消費税引き上げの際に新聞購読に「知る権利を担保する」などとして軽減税率を適用しようという政策議論が出たら秒殺でみんなで批判しておったと思います。でも、「新聞に軽減税率なんておかしい」って論陣を張ったテレビ局はゼロでしょゼロ。そんなもんです。

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 そりゃ衰退しますって。

産業の問題と才能の問題は分けて考える必要がある

 なもんで、テレビもまた年寄りとともに衰退するメディアなのでしょうが、しかしテレビ局が経営的に行き詰まることと、テレビ的なるものの寿命が来ることとは違います。

 テレビ局とは単なる装置産業であり、電波というインフラによって支えられた事業者に過ぎないので栄枯盛衰はあるでしょうが、テレビ的なるものというのは日本社会を支える動画づくりの在り方であって人が作るものです。テレビ業界はなくなっても、番組を作る人はYouTubeだろうがNetflixだろうがAmazon Prime Videoだろうがどこででも才能を発揮し、収益を上げることが可能になります。産業の問題と才能の問題は分けて考える必要があると思うんですよね。テレビ局にも、映像づくりの上手い人がたくさん残っているはずです。

モーリー・ロバートソンさんの「意見表明」ってどうなの?

 

 新聞業界が新聞を各家庭に配るという仕組みを失って迷走しているけど、きちんと取材のできる新聞記者は記事を書いて生き残る。文春だって通勤客が駅売りの雑誌を買わなくなる中で発行部数は苦戦することもあるけど、優れた記事はネットでも激しく読まれて支持を受けて存続する。同様に、テレビもやっすい制作費で有識者でもないタレントに時事問題を語らせる質の低い番組を垂れ流すよりは、もっと広く視聴者を国内海外に求めて打って出られるコンテンツ作りと資金調達ができるようになるといいなと強く思います。

 そして、これらの議論はテレビ局に勤め、自分たちの仕事の未来を考えている諸氏からすれば、みんな当たり前のように考え、どうにかしなければならないと思って日々業務をし、番組を制作しておられるだろうと思うと、そういう業界の改革に一歩を踏み出すことのむつかしさを強く感じます。本来なら、一番活気のある産業の一つであるべきなのですが。

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