史上最悪といわれる日韓関係は明るい兆しが見えない中、安倍首相が辞任することになった。新政権は、この日韓関係をどのように立て直せば良いのか。40年にわたって在韓記者として取材を続け、この夏に「反日vs.反韓 対立激化の深層」(角川新書)を上梓した黒田勝弘氏(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)に聞いた。
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本当はみんな日本が気になって……
――日韓関係が最も冷え込んだのは昨年(2019年)夏でした。それから1年以上が経過しましたが、関係改善は実現するのでしょうか?
安倍首相が辞任を表明したことで、前編で紹介した通り、韓国では日本との関係が改善するのではないかという淡い期待が広がっている。この辞任を機に、韓国側も姿勢を柔軟化させ関係改善を目指すべきだという雰囲気が世論に生まれつつあります。
しかし、日本人からすれば、昨年韓国政府が行った日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の通告や、激化した日本製品の不買運動、日本旅行のボイコットなどを思い出すと、本当に日韓関係を改善することなどあるのだろうかと疑問に思う向きもあるかもしれません。
ただ40年暮らしている私から見れば、韓国の人々には相変わらずとても強い「日本への関心」というか親近感があります。
安倍首相の辞任に至る過程でも、「安倍首相は7時間病院にこもって身体検査をした。健康状態が不安視されている」「ポスト安倍は誰々だ」「野党の合流も進んでいる」と、連日にわたって詳しく報じられていました。
韓国にとって、日本はいわば「一大コンテンツ」。この関心の高さと情報量の違いは、日韓を比較してみるとよく分かります。日本から韓国に向けられる関心は、たとえばK-POPや韓流ドラマ、グルメ、はたまた「嫌韓」本など、どこか限定的で一部に特化したものです。
しかし、韓国から日本への関心は真逆。多くの人に共有される形で、“薄く広く全体的に”向けられている。喫茶店や居酒屋にいても、どこからともなく「イルボン(日本)」という言葉がしょっちゅう聞こえてきます。彼らはいわば日常的に日本を話題にしている。古い言い方ですが、日本については「巨人、大鵬、卵焼き」的な国民的関心事になっているのです。