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連載テレビ健康診断

「うへえ」と思いつつ…「男性嵐ファン」に美しさを感じた理由――青木るえか「テレビ健康診断」

『嵐ツボ』(フジテレビ系)

2020/09/14

 コロナだ首相退陣だで世情騒然とする中、『VS嵐』に『嵐(アラ)ツボ』、計3時間あまりのゴールデンタイム。日本はノンキだと思う。

『VS嵐』をすっごく久しぶりに見たんだけど、「これで番組成立するのか!」と驚く「嵐とタレントがスタジオでボール蹴ったりゲームしたり笑ったりしてる」だけの番組なので、それを嗤ったりしていた、のだが。

©文藝春秋

『嵐ツボ』にやられる。これは嵐の皆さんが、スタジオを飛び出ていろんな人と会って話して盛り上がる2時間特番。『ONE PIECE』の尾田栄一郎と会うのが目玉みたいになっていたがその部分はあんまり面白くなく(あと4~5年で『ONE PIECE』は完結するって言ってたのにはびっくりしたが。まだそんな続くのか)、私がしみじみ見てしまったのは「嵐愛ランキング」という、自薦他薦650人の中から選ばれた「男性嵐ファン5人」が嵐とクイズ合戦をして「自分の“嵐愛”を嵐に、全世界にお見せする」コーナー。

 この、嵐の男性ファンの皆さんには胸をつかれた。

 アイドルと、その同性のファン。これがふつうに女のファン連れてきたら、ファンはもちろんただ見てるだけのお茶の間も「なにいい気なことやらしてもらってんだコイツら」という気持ちになるが、この嵐の男ファンの皆さんにそういう気持ちは抱かない。いや、同性のファンならいいってわけではない。「女性アイドルの女性ファン」なんかだとこれが微妙に違ってくるんだな。こういう場所に出てこようという人には何らかの野心が、それも自分がのし上がろう、なんならアイドルに取って代わろうという野心がチラッとのぞいたりするものだが、ここに出てきた嵐ファンの男性たちの、ただまっすぐ嵐を見つめる眼差し。自分が嵐のヲタクである喜びと、自分なんかがヲタクであることの申し訳なさみたいなものとがいりまじって、道端に落ちたガラスのかけらに陽が当たってキラリと輝いたような美しさだ。といっても「握手会にたむろするヲタク」の空気はしっかりある。ちょっと「うへえ」と思わせる部分もある。それがなかったら絵空事だ。

©文藝春秋

 そんな素晴らしい嵐の男ファンの皆さんだった。しかしこのファンの皆さん、今後はたぶん二度と嵐に会うこともないだろうし、会えた喜びと、同じぐらいかそれ以上の喪失感もあるだろう……などと考えると他人事なのに涙が出そうになる。『嵐ツボ』で涙を流すなんて人として本当にイヤなので、フジテレビのバラエティ番組に仕込みがないわけない、きっとこの男ファンと称する5人はそれっぽく見えても代理店の知り合いとかで、終わったら嵐とお疲れさん呑みでもしてるんだ、と思って気を鎮めた。……このご時世にいちばんノンキなのは私だ。

INFORMATION

『嵐ツボ』
フジテレビ系 不定期番組
https://www.fujitv.co.jp/alatubo/

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