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麒麟川島明が語る“芸人になる原点”「小1、ファミコンが家に届いた日が人生のピークかもしれない」

『ぼくをつくった50のゲームたち』#1

2020/09/13
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川島 兄貴と2人で必死に集めましたから。おばあちゃんにもらったり、あと、集めているというのを知っている近所の人がくれたり。スーパーで拾ったこともありましたね。おやじは「ファミコンなんて絶対に買わん」と言ってたので、グリーンスタンプに頼るしかない、と。そうして1年以上かけて集めたグリーンスタンプの束をスーパーに持って行ったんですよ。台紙なんかノリでベタベタでね。届くのは2週間後くらいですって言われて、それからは、もう寝れへんかったですよね。

――待っている時間がたまらないですよね。

川島 学校帰りにスーパーに寄り道して、チラッと見て、まだないとガッカリして帰ってくるんです。で、ある日、おかんが買い物行くというので、僕も兄貴もついていって。そうしたら「川島様」と書かれた銀色の箱が置いてあったんです。気絶しそうになりましたね。ほんま。あのときが僕の人生のピークかもしれないです。

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©️文藝春秋
1983年7月に発売されたファミコン ©時事通信社

――昭和の時代、初めて自分の家にテレビが来た日の感動に近い気がしますね。

川島 兄貴と2人で手を震わせながらゆっくり箱を開けたときの、発泡スチロールが擦れる音と、そのにおい。これがファミコンなんだ、と。まだカセットもないので、最初は、ただ、コントローラーを触って遊んでいました。

初めて買ったソフトは……

――そうして初めて買ったカセットが、この本でも、最初に取り上げられています。

川島 「ソフトは1年に1本しか買わない」と親に言われていたので、慎重に選びました。おやじは「将棋やったらええな」とか言ってましたね。自分もできるので。でも、そこは考えに考えた末に、兄貴の意見で『エキサイトバイク』になった。オフロードバイクのレースゲームです。人気の『マリオブラザーズ』とかはみんな持っているので、ちょっと珍しい『エキサイトバイク』なら、友だちとカセットの貸し借りしてもらうこともできる。だから1本持っているだけでいろんなゲームができましたし、何よりゲーム自体も面白かった。結果、大成功でしたね。

川島少年が初めて買ったカセット『エキサイトバイク』
『スーパーマリオブラザーズ3』

2001年M-1初出場のあと「いちばん嬉しかったこと」

――それから『熱血高校ドッジボール部(くにおくん)』『ファイナルファンタジー』『キャプテン翼』……と当時の小学生が泣いて喜びそうな懐かしいゲームがどんどん出てきます。そこは本で楽しんでもらうとして、2001年にM-1に初出場したときには、そのギャラでプレステ2と『鬼武者2』というアクションゲームを一気に買われたそうですね。

『くにおくんドッジボール』
『キャプテン翼』

川島 お金を稼げるようになっていちばん嬉しかったのは、そこでしたね。ゲームを自由に買える。ゲーム屋さんに行くのが嬉しかったですもん。それまではクリアしたゲームを売って、そのお金で新しいカセットを買うしかなかったので。