極真の第1回全日本選手権大会初代チャンピオンである伝説の空手家、山崎照朝。『力石徹のモデルになった男 天才空手家 山崎照朝』(東京新聞)から、著者の森合正範氏が山崎氏に行ったインタビューを一部紹介する。「極真の竜」は何を語るのか。

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―― 第1章の最後にも書きましたが、最近になって、初めて漫画『あしたのジョー』を通して読んだんですよね。

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「うん、読んだよ。初めからずっと読んだ。梶原一騎は凄いな。よく勉強しているよな。ボクシングの専門用語を知っているし。俺も長いことボクシングを取材しているからさ。細部にわたって、ああ、こういうことも知っているんだ、とちょっとびっくりしたな」

提供・東京新聞

―― 山崎さんは長らく「力石のモデル」ということを黙っていましたよね。

「一度、雑誌かなんかで聞かれたから言ったんだよ。梶原一騎から『おまえがモデルだ。力石っていうんだ』って言われたって。そしたら、売名行為だと言われてな。梶原先生からはっきり言われたけど、証明できるものもない。梶原先生は亡くなっていたし、なにせ、俺は有名になりたくないし、目立ちたくもない。だから、売名行為と言われてまで『もう言うことはないな』と思ったんだ。そしたら、ある記者が『梶原一騎の息子さん(高森城)からも聞いていますよ。裏(証言)はとれていますよ』と言ってきてな。それからは、自分から言うことはしないけど、聞かれれば、実際にあったことをちゃんと答えているよ」

―― この本は2013(平成25)年に『東京中日スポーツ』(中日スポーツ)で連載した「山崎照朝 空手バカ一代記」を基にしています。それ以降、大きな出来事として、石橋雅史先生が亡くなりました。

「あれは一番のショック。技の面で一番尊敬していたから。組手も参考にしたからな」