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一切仕事をもらえないところに俺は行く

―― そういう点で学ことが多かったと。

「実戦の本質はそこだもん。そういうことを分かってもらえていない。俺が先輩を侮辱しているように取られたら困る。俺はずっと最大限に評価しているし、尊敬している。なんか曲がった形で伝わっているんだよな」

―― 当時の極真はそういう組手ですもんね。

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「俺は空手を知らなかった。喧嘩に使えるかどうかだから。それが原点。やっていくうちにさ、体が頑丈じゃないとやられちゃうと分かったんだよ。田舎には山の斜面に果樹園があって、重い収穫物を背負って、上り下りする。強くなるためにはこれはいいトレーニングだと自分でイメージする。意識を変える。それまでは百姓仕事が嫌で嫌で仕方なかったのに、全然嫌じゃなくなってさ。俺はそういう意識の変え方というのは早いんだ。仕事でも何でもそう。嫌々やったら身につかない。でも、面白い、楽しいと思ったら覚えるのは早い。物事ってそういうことだと思うんだ。まず好きになるか、ならないか。嫌いなものでも好きにならないと駄目なんだよ。だから俺は嫌いなものに対して向かって行くんだよ」

約40年ぶりに再会し、一緒に稽古に励んだ石橋雅史(右)と山崎、2013年3月2日 提供・山崎照朝氏/東京新聞

―― それは社会人になってからも生きたと話していました。

「例えば営業に行って、名刺を置いてもまったく相手にされないときがある。『そう言わずに』と俺は毎日行くんだ。自分から向かっていく。俺のことを目の敵にする人もいる。一切仕事をもらえない。そういうところに俺は逆に行くんだよ」

―― それが極真で学んだこと。極真魂ですね。

「そうそう。みんなが嫌うところ、みんながやりたがらないことを俺はやるんだよ。そのやり方で(営業して)埼玉で(フリーペーパー「東京新聞ショッパー」が)100万部いったんだ。競合社はギブアップしたんだから。逆にね、俺はごまをするような奴は弾く。そういうタイプなんだよな」

―― 山崎さんのことを偏屈、頑固という人もいます。自分でもそう思いますか?

「俺は理にかなっていると思うんだけどな。大義名分が立たないものは認めない。会社であれ、喧嘩であれ。俺が喧嘩するのは常に上の人。会社だったら上司。下の奴は相手にしない。俺が身を引けばいいとなる。だから俺のことを偏屈とか言う人もいるんだろうな」