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ああ勘違い…マイナス7800万円の現金残高で自殺 「ロビンフッド族」の愚かな生態

コロナ給付金をハイテク株に注ぐ初心者投資家たち

2020/09/16
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「自分が何をしているのか全くわかっていなかった」

 このような不平等な社会を是正するために、十分な元本がない若い人でも手軽に株を買えるようにして一発逆転のチャンスを与えようという思想の元に生まれたのがロビンフッドなのです。13年に創業をして以来、20~30代の若者を魅了して、利用者は1300万人を超え、想定時価総額も1兆円を上回る規模まで成長しました。オプション取引等の金融教育なども行っており、初心者がいきなりオプション取引を活発に行うようです。オプション取引とは、将来の決められた日にあらかじめ決められた価格で買う(売る)権利を売買する取引です。

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 しかし、急速に成長をするユニコーン企業には問題はつきものです。なんと、ロビンフッドを利用してオプション取引をしていた20歳のアメリカの若者が多額の損失を負っていると勘違いをして命を絶ってしまったのです。残された遺書には「自分が何をしているのか全くわかっていなかった」と記されていたと言います。彼が残していたスマートフォンのスクリーンショットにはマイナス約7800万円の現金残高が赤字で表示をされていたようです。

 実は、この金額は借金の額を示すものではなく、割り当てられたオプションが口座に反映される前の暫定残高であった可能性があるようです。彼はオプション取引を理解していないままに取引を始めてしまったのです。

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日本でも初心者の個人投資家が米国株に熱狂

 3月中旬にマーケットを襲ったコロナショックを契機に、日本でもネット証券口座の開設が殺到しました。私が住んでいるシンガポールでも同じことが起きました。世界の先進国の若者たちは、給付金を使って株式などに投資をしてお金を増やそうとしているのです。アップル株で大儲けをして働かなくなってしまった若者のインスタグラムも見ます。そういう姿を見ると、自分も遅れをとってはいけないと株を買い始めるので、株価が上がり続けるのです。

友達紹介でもらったスクラッチを削ると、紙吹雪が降ってくる。

 日本では初めての投資家がいきなり米国株を購入したり、オプション取引をしたりしているようです。しかも、ETF(上場投資信託)などのインデックスではなく、いきなりテスラやワクチン関連の個別株などから入る人も多くいます。

 同時に、投資の情報を発信してお互いに情報収集をするため、Twitterも始めた個人投資家も増えています。その影響は大きく、9月8日には高値警戒感があったIT株が利益確定などの調整売りから急落し、テスラ株が20%安、テスラのオプションに関しては90%安になりました。米ハイテク株のオプションで大きな取引をしていたソフトバンクグループ株も9日に一時7%下がりました。Twitterでも「#ハイテク株暴落」というハッシュタグが話題となり、個人投資家たちがあれこれ意見を交わしていました。