9月14日の菅義偉首相(当時官房長官)の自民党総裁選出のニュースは速報で伝えられ、翌15日の朝刊1面にはこんな見出しがずらりと並んだ。
「日本 次期総理 菅 安倍政策継承」(朝鮮日報、9月15日)
「ナンバー2からトップへ 日本 菅時代」(中央日報、同)
「菅 16日に日本の総理へ 安倍継承が私の使命」(東亜日報、同)
「日本 安倍継承した『菅時代』開幕」(韓国日報、同)
「日本自民党総裁に菅選出 事実上次期総理確定」(京郷新聞、同)
「骨の髄までナンバー2の菅 安倍継承が私の使命」(ハンギョレ新聞、同)
報道の内容はいずれも、“安倍前首相シーズン2”というニュアンスで、保守系の朝鮮日報は「上王安倍 辞意明らかにした後もトランプ米大統領、プーチン露大統領と続いて通話」と書き、中道系の韓国日報も「菅 安倍政権継承使命 徴用工問題など強硬策維持か」と伝えていた。
「ナンバー2として生きた豊臣秀長の生き方に憧れた」
目を引いたのは、もっとも政権寄りといわれる進歩革新系のハンギョレ新聞だ。菅首相大解剖を試みていて、菅首相が誕生した背景には、安倍前首相が背後で自身の政治的影響力を行使できるからとし、「実際に菅総裁は豊臣秀吉を助け、ナンバー2として生きた弟、豊臣秀長の生き方に憧れた。彼はインタビューで、秀長のようにいつも背後で守り抜く存在がいたから豊臣秀吉は天下をとれたと考える、と答えている」という逸話を紹介。
そして、そうした意志は、「官僚社会を掌握し、トップを補佐することに卓越」していて、「安倍政府の弊害のひとつといわれる“忖度”の中心にいて、内閣人事局を作った」ことにも現れているとしている。
しかし、そうしたナンバー2の立場でいたためか、「日本をどう率いていくのかという指導者としてのビジョンと政策が脆弱」と指摘し、「今回も目を引くのはデジタル省設立のみ」で、「大衆が好む政策を推進するポピュリストとしての面も目を引く」と書いていた。
「背広を着たまま40分歩く」「新聞の人生相談精読」
もっとも次期首相は菅当時官房長官と想定されていたため、9月初め頃から、さまざまな関連報道が出ていた。
朝鮮日報は、日本の報道を引用し、「背広を着たまま40分歩くことから1日が始まる」、「読売新聞の人生相談も欠かさず精読している」、「72歳でも腹筋運動を毎日100回ずつ」、「酒をたしなまないが事務所でパンケーキを食べるのが一番の楽しみ」と菅首相の一端に触れ、「(3候補者のうち親の七光り)なく、派閥もなく、抜きんでた学歴無しの菅が総理になれば日本の歴代総理の中で異例の人物として記録される」とし、韓国については、「韓国では英雄とされる伊藤博文を射殺した安重根をテロリストと表現した」という過去の発言を報じていた。
菅首相をモーレツ主義のマキャベリストと評したのは中道保守系の中央日報で、菅首相は「『君主論』から官僚社会を読み解く人物」(9月11日)であり、安倍前首相が長期政権となったのは、菅当時官房長官が人事権を掌握していたためと分析。