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「自分メディア時代は終わる!」 ちきりんが描く、“教祖”抜きで成り立つネット社会とは

「自分メディア」はこう作る! ちきりん×pha対談より

2020/10/09

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, ライフスタイル, メディア, 働き方, 読書

note

有名人のためのネットから、みんなのためのネットへ

ちきりん そう言われて気づいたんですが、他の書き手の方は長く残したい文章はブログじゃなくて本に書いてるんですね! なのに私はブログに「残る文章」を書いている。だから差別化できているのかも。

pha そうかも。僕らは本を好きすぎたのかもしれない……。

ちきりん たしかに本なら10年前どころか、50年前のものでもおもしろい本、というか価値ある文章はたくさん存在しますよね。でも本の形だと、古い本はなかなか掘り起こされないのがもったいない。星新一さんとか司馬遼太郎さんのようなクラスにならないと、本は書店には残れない。けどブログだったら、そこまでの大御所じゃなくても「いつでも取り出せる形」で残せますから。

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 あと、私のブログって、今でも多くの人が古いエントリを読んでくれるんです。ツイッターのおかげでもあるんですけど、たまたま昔のブログエントリを読んでくれた人が、URL付きでその感想をツイートしてくれる。で、私がそのつぶやきをリツイートすると、ときには最近書いた新しいエントリよりよく読まれたりもします。こうなると、すごく生産性が高いと思うんですよね。「書き続けないと価値が出せない」のではなく「過去に書いたもので今でも価値が出せる」わけだから。

Pha 毎日の発信というフローじゃなくて、過去に書き溜めたストックがものすごい価値を持っているということですね。ちきりんさんのように10年後もずっと読まれ続けるような記事を書くのはなかなか難しいかもしれないけど、ブログ記事をストックして過去記事に価値を生み出してもらうというのは、もっとみんなが意識してみてもいいアイデアかもしれないですね。僕も残すことを考えてブログを書いてみようかな。

©iStock.com

ちきりん phaさんは今後、ネットの世界はどう変わっていくと思いますか?

pha 10年前はブログとかツイッターが新しいものとしてもてはやされていたけど、今はユーチューブとかインスタグラムが人気ですよね。やっぱり文字を読むことからみんな遠ざかっていっているのかな。まあ、もともと文字を読む人っていうのはあまり多くないんでしょうね。

ちきりん それ、文字が好きな私やphaさんにとってはさみしい感じもしますけど、でも、選択肢が増えるのはすごくいいことですよね。新しいものが出てくると、いつだってみんなが飛びつくけど、実際にはそれが全員に合っているわけじゃない。ウォークマンが出てきたときは、電車の中でみんな音楽を聞いてました。そんなに音楽好きじゃない人も、みんな音楽を聞いてたんです。でもそういう人はそのうち離れていく。

 ブログも同じです。みんながみんな、人に読んでもらえる文章が書けるわけじゃない。そういう人はブログしかなかったときは苦労してたと思います。でも、文章は苦手だけどしゃべるのが得意という人は、ユーチューブが出てきて救われました。長文は書けないけど、短文で気のきいたことが言える人はツイッターで救われる、おしゃれなお洋服が好きな人はインスタで救われ、メンタルは強くないけど、リア充で活動的な人はフェイスブックで居場所を作れる、みたいに、自己発信のツールが増えれば増えるほど、救われる人が増えるでしょ。発信ツールの数、今はせいぜい20種類くらいですけど、もし200種類くらい発信ツールが開発されたら、もっとたくさんの人が自分を表現できるようになるんじゃないかな。