昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/09/24

――ちなみに投げ銭の内訳として、熱狂的なごく少数のファンが大部分を支えているのか、それとも薄く広くなのかも気になります。

 データを見ると、1万円の投げ銭をする人と200円の投げ銭をする人の数は実は10倍までは違いません。なので額としては1万円を投げる人の存在感が大きいですが、少額の視聴者も含めるとそれなりの人数で支えているという印象です。もちろん割合としては投げ銭をしない視聴者が圧倒的に多数派です。

 たまに100万円以上の投げ銭をする人がいて「石油王」と呼ばれたりしますが(笑)、それはやはりレアケース。小さな積み重ねが大事ですね。

「お金を払うこと」に価値を見出すアイドル・アニメファン

――ここ数年で大きく知名度を伸ばしたYouTuberは日本でも数多くいる中で、今回はVTuberが上位を占拠しました。これは何か理由があるのでしょうか。

 日本人が投げ銭をする理由の1つが、まさにVTuberの存在です。

 これはデータに基づくというよりは感覚的な話なのですが、アイドルやアニメ好きの方には「お金を払うこと」自体に価値を見出す傾向があります。愛情の可視化、というんでしょうか。

日本のオタク文化圏には、お金を使う、コンプリートすることを尊ぶカルチャーがある ©iStock.com

 アニメ「ラブライブ!」のグッズを全身に鎧のようにまとった“武装ラブライバー”や地下アイドルファンにとってのチェキのように、グッズや写真そのものよりも「こんなにお金をつぎ込むほど好きなんだ」というアピールに商品価値・満足感の比重がある。VTuberの視聴者もその文化を引き継いでいます。

 アイドルやアニメ好きの持っていた「お金を払うこと」「いくら払ったかが周囲にも見えること」を重視する傾向と投げ銭は相性が良かったのだと思います。

――たしかに、日本のアイドル・アニメ文化が世界的にも特殊であるのはよくわかります。VTuberのクリエイターたちはやはりアニメ、アイドル文化圏の人たちなのでしょうか。

 いま人気のVTuberの中には、配信で稼ぐことが一般的になる以前からニコニコ生放送などで活動していた方が多く含まれています。当時はもちろんVTuberとしてではなく、それぞれの名前で活動していました。

 しかし日本のネットでは、クリエイターがお金を稼ごうとするのを嫌う「嫌儲(けんちょ・けんもう)」文化がずっと強くて、なかなか人気を収入に繋げることが難しかったのです。

 その空気が徐々に変わり、クリエイターが稼ぐのが当たり前になってきたのと同じ時期にVTuberというシステムが出てきたことで、すでに技術と人気を持っていた才能ある人たちがVTuberに“転生”して再スタートすることで、人気を収入に繋げられるようになりました。以前の名前が「前世」として知られていることも多いのですが、ファンはそれ込みで楽しんでいます。