――興味深い世界です。いまや日本のYouTubeのチャンネル数は20万以上、VTuberだけでも1万人以上いると言われていますが、人気が出て視聴者や投げ銭を集められる配信者とそうでない配信者にはどんな違いがあるのでしょう。
これは私たち「配信技研」の思想の根幹でもあるのですが、いい配信とはつまりオーセンティシティ(Authenticity)が高い配信のことだと思っています。
オーセンティシティは日本語に訳すと、本物さや真正性です。
つまり配信者が本当に楽しんで配信しているのか、それとも仕事としてやらされているのかを視聴者は敏感に察知します。
大物芸能人がテレビのような豪華セットで配信していても人気が爆発しないケースがあるのは、仕事感が出てしまいがちだから。あくまで本当に個人として楽しんでいるのか、というのが重要です。VTuberに関しても、にじさんじやホロライブなど大手事務所の力は絶大ですが、それだけでは継続的に視聴者に愛される配信にはなれないんです。
「投げ銭でカメラがパワーアップ」などの手応えが大事
――配信はリアルタイムで反応してもらえるのも嬉しいですよね。
双方向性は圧倒的に重要ですね。生配信は動画と違って編集でごまかせないので、視聴者はよりリアルな人間性やコミュニケーションを求めています。自分のコメントや投げ銭への配信者の反応や、「もらった投げ銭でカメラがパワーアップした」のように、投げ銭されたお金が配信者にちゃんと届いているという手応えも、オーセンティシティに繋がる大事な要素です。
――今回のランキングでは1位の桐生ココさんが累計で1億円以上の投げ銭を集めています。ものすごい数字ですが、いわゆる「中の人」には何割ぐらい入るものなんでしょうか?
1億円は視聴者が送った投げ銭の総額なので、そこからまずAppleやGoogleの手数料約30%を引き、スマホからの投げ銭は支払い方法によってはさらにドコモなどへのキャリア手数料を引き、残ったものが収入になります。
そこから先、売上がどういう割合で所属事務所といわゆる「中の人」に入るかはケースバイケースで、出来高だったり固定給+インセンティブだったりするようです。
視聴者の「投げ銭が配信者にちゃんと届いている」という実感の問題にも関わるので、収益構造の情報公開はナイーブなんですよね。