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「半沢直樹」で大和田暁取締役は、なぜ”憎き敵役”から“恋する乙女”になったのか?

ついにクライマックスへ!

2020/09/20
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コワモテおじさんのギャップを愛でることに慣れた

 実力ある「おじさん」俳優たちを主役に据え、ゴールデンやプライム枠ではできないグルメや趣味など、個の世界を描いてきたテレ東深夜枠。低予算であること、深夜で自由度が高いことを最大限に利用した「巧い役者の少数精鋭で作る」ドラマ作りが時代にマッチし、次々にバイプレイヤー俳優たちが主演のドラマが作られてきた。

香川照之 ©AFLO

 こうして、視聴者はB級グルメを夢中で食べていたり、カワイイモノを愛でていたり、幸せそうな表情を見せたりする「Vシネ・ヤクザ映画系」のコワモテおじさんたちのギャップを愛でることに慣れていったのだ。

 そして深夜ドラマでの密かなお楽しみになっていった“可愛いおじさん”は、社会現象ともなった「おっさんずラブ」(テレビ朝日系・2018年)で市民権を得る。この作品で、ピュアで普遍的な恋愛に身も心も投じるおじさんたちの魅力が一般的に広く浸透した。

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 今年の春から夏にかけても、可愛いおじさんたちがたくさん登場している。「私の家政夫ナギサさん」(TBS系)の大森南朋や、「おじさんはカワイイモノがお好き。」(読売テレビ・日本テレビ系)の眞島秀和、「MIU404」(TBS系)のずん飯尾など、ほっこりかわいいおじさんたちに癒された。“おじカワ・おじキュン”はドラマゴールデン枠でも見られるようになったのだ。

「私の家政夫ナギサさん」(公式サイトより)

可愛くないのに……大和田のおじカワは次のステージへ

 とはいえ、そういったおじさんキャラのなかで大和田は異色でもある。

「孤独のグルメ」の松重豊のように無害ではないし、「わたナギ」の大森南朋のように包容力があるわけでもないし、「おじさんはカワイイものがお好き。」の眞島秀和のようにゆるキャラを愛しているわけでもない。大和田は強欲で、計算高く、居丈高で、面倒くさい。分かりやすい可愛さがないのに、視聴者にはここまで可愛がられ、愛されている。

 大和田の可愛さは“おじカワ・おじキュン”文化の浸透によって発見されたことは間違いないだろう。しかしその愛でられ方は次のステージに移っているようだ。

「半沢直樹」で大和田暁取締役は、なぜ”憎き敵役”から“恋する乙女”になったのか?

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