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空席救済策「ぷらっとこだま」の事情

「こだま」の大安売りは国鉄時代から始まっていた。「こだまラウンドきっぷ」は2枚綴り回数券のような商品で、1人で往復、2人で片道という使い方。さらに「こだま2&2ペアきっぷ」は2名往復の割引きっぷだ。こうした「こだま割安」きっぷは「ひかり」に対して不人気だった「こだま」の空席を埋めたいという意図だった。それが「ぷらっとこだま」に継承されている。

 なぜ東海道新幹線の「こだま」に空席が多いのか。利用客が少ないにもかかわらず16両編成で運行するからだ。山陽新幹線の「こだま」は8両編成で、需要と供給のバランスを取っている。かつては6両編成や4両編成の「こだま」もあった。しかし東海道新幹線の「のぞみ」「ひかり」「こだま」はすべて16両編成だ。その理由は過密ダイヤにある。16両編成で統一すると、「片道をこだまで走らせて、折り返してのぞみとして運行する」という運行ができる。ダイヤが乱れたときも使用車両を入れ替えて対応できる。こだま用に短編成の列車を仕立てるより都合がいい。

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日帰り往復1万5700円という破格の「ひさびさ旅割引」

「ぷらっとこだま」の経緯を知れば「ぷらっとのぞみ」の登場も「空席が余っているから」と考えがちだ。感染症予防の外出自粛の影響で、交通機関のほとんどが困窮している。JR東海おまえもか、と思う。しかし、上記の事情をよく見てほしい。「こだま」の空席は「のぞみ」と同じ編成で走らせているからだ。「のぞみ」の空席は、運行本数を減らせば調整できる。JR東海としては「のぞみ」をダンピングする必要はない。

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東京駅 ©️iStock.com

 旅行需要回復のための営業施策は必要だけど、JR東海ツアーズだけに空席を優遇する必要もない。じっさいにその通りで、じつは「ぷらっとのぞみ」より格段に安い旅行商品もある。

 たとえば、JR東海と複数の旅行会社がタイアップしている「ひさびさ旅割引」がある。往復割引商品と宿泊を伴う商品があり、ここでは往復割引商品で比較しよう。JR東海ツアーズが提供する「ひさびさ旅割引★★日帰り1day 大阪スタンダードプラン」は、東京~新大阪間の日帰り往復で1万5700円。旅行商品の体裁を整えるために500円分のキヨスク利用券が2枚つく。利用期間は2020年10月1日から2020年12月25日まで。近畿日本ツーリストが提供する「【WEB】ひさびさ旅割引★★ 日帰りの旅 大阪」は、ハルカス300(展望台)入場券付き1万6500円。どちらも片道あたりの「のぞみ」の料金が半額程度になる。

 ひさびさ旅割引はタイアップする旅行会社も多く選択肢が広い。宿泊タイプも集客に積極的なホテル側が大胆な値引きをしている。これから旅に出る方は、こちらも比較してほしい。