「腰こり」という言葉を聞いたことがありますか?

「肩こりなら知っているけれど、腰こりなんて、聞いたことがない」という人がほとんどではないでしょうか。わたしも聞いたことがありませんでした。

「でも、肩と同じように、腰も“こる”んです」。そう話すのは、9月に『1回1分 腰痛が消える ちょいトレ』(知的生きかた文庫)を上梓した、戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師です。どういうことなのでしょうか。

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「“こり”というのは医学的には、筋肉が硬く縮んで、緩みにくくなっている状態を言います。それが肩だけでなく、腰にも起こり、腰痛の大きな原因の一つになっているのです」(戸田医師)

そもそも、なぜ筋肉は“こる”のか?

 筋肉は「アクチン」と「ミオシン」という二つのたんぱく質からなる「筋原線維」がたくさん集まってできています。筋肉は、アクチンとミオシンが重なれば縮み、離れれば緩むようにできているのですが、筋肉が緩むときには「ATP(アデノシン3リン酸)」という細胞のエネルギーとなる分子が必要です。

 ところが、何らかの原因で血流が低下すると、血液によって運ばれる酸素が減り、ATPが不足します。そのため、アクチンとミオシンを引き離すことができず、筋肉が緩みにくくなります。これが「肩がこった」「腰がこった」という状態です。

 そして、この筋肉のこりは、知覚神経によって「痛み」として捉えられ、脊髄を通って脳に伝達されます。こうして、腰がこり、腰痛が起こってしまうのです。

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日本人は世界で一番長く座っている!

 それにしても、なぜ「腰こり」が起こるのでしょうか。その要因の一つが、「長時間座っていること」です。椅子に座りっぱなしでいると、あまり腰まわりの筋肉や骨盤が動きません。さらには、椅子に座るとお尻の筋肉が体重で圧迫され、血流も低下してしまいます。

 実は、日本人は1日平均7時間と、世界で一番長く座っているという調査もあります。このコロナ禍でも、ステイホームやリモートワークの推奨で、椅子に座る時間が長くなった人が多いのではないでしょうか(スポーツ庁Web広報マガジンDEPORTARE「日本人の座位時間は世界最長『7』時間! 座り過ぎが健康リスクを高める あなたは大丈夫? その対策とは…」2019年10月11日)。