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「マスクは白を着用するように」 日本の学校で“ブラック校則”が平然とはびこる理由とは

『学校弁護士 スクールロイヤーが見た教育現場 』より

2020/10/22
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 にもかかわらず、教育関係者は「メールやSNSで教師と児童生徒が連絡すること自体が道徳的に問題」と捉えて、連絡を禁止するルールを設けるのである。

 私は、こうした教育関係者特有の道徳観が、社会常識よりも行き過ぎた統制を児童生徒に課すブラック校則の背景事情ではないかと考えている。

学校に委ねられた「しつけ」

 以下は推測でしかないが、一つの理由としては、日本の学校教育は本来は家庭で行われるべき「しつけ」を学校に委ねてしまい、学校と家庭の役割分担があいまいになっていることがあるのではないか。教師一人当たりの児童生徒数や1クラス当たりの学級規模が海外よりも多く、一人の教師がたくさんの子どもの面倒を見なければならない。また教師の生徒指導の負担も大きい。そのため、画一的なルールで統制したほうが生徒指導もやりやすいことから、行き過ぎた統制を生み出してしまうのではないだろうか。

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白いマスクを強要したくない

 ブラック校則の問題は、新型コロナウイルスの影響下の学校で新たなブラック指導を生み出した。その一つが「白いマスクを強制するような指導」だ。

©iStock.com

 私が相談を受けたケースは、校長からマスクは白を着用するように生徒を指導しなさい、という職務命令を受けた先生からのものだった。校長の意図としては、日本では医療機関でも白のマスクが一般的であり、清潔感があるということと、白以外のマスクだと不快感を持つ生徒もいるかもしれないから、ということなのだそうだが、相談当時はマスクの供給が逼迫し、白いマスクに限定すればマスクを着用できない生徒もいた。また、清潔感や不快感はあくまでも印象論であり、法的に生徒の行動を規制するにはあまりにも根拠が弱すぎる。そのため、この職務命令は違法性があると回答した。