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問題は「学校」だけなのか

 私は、日本社会の道徳観に由来すると考えている。例えば、就職活動の際に、金髪やジーンズで面接に臨む人間はほとんどいない。つまり、日本社会にはTPO(時・場所・場合)に相応の「髪形」「服装」を強く意識する道徳観が存在する。子どもの人権の立場から「校則のない自由」を主張する弁護士らも、自身が法律事務所の就職面接を受けた際に金髪やジーンズで臨んだ者は皆無だろう。

 したがって、私自身は日本の学校が「髪形」「服装」に関して、何らかの基準を規定する校則を設けることには、日本社会の道徳観から考えて、一定の合理性があると考えている。

 そこで、私が生徒に校則指導する際には、例えば黒髪を金髪に染めて登校してきた生徒に対してはこのように指導する。

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「あなたが就職活動でも金髪を通すなら別に金髪で登校してきてもいいが、就職活動は黒髪にして教師の前では金髪にするならその理由を説明しなさい」

 教える側、教わる側の礼儀や道徳観が、日本社会に全く存在しないわけではないからだ。

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 しかし、前記(1)(2)のブラック校則のように、社会常識の範疇を超えてまで「髪形」「服装」を統制する校則が存在するのは、教育関係者特有の道徳観に由来するとしか考えられない。

教育関係者に特有の道徳観

学校弁護士 スクールロイヤーが見た教育現場

 私は教師と弁護士の双方の仕事をする中で、教育関係者特有の道徳観を感じることが度々ある。その一つが、多くの学校で存在する「メールやSNSによる教師と児童生徒との連絡の禁止」というルールだ。このルールの目的は、メールやSNSを用いて、教師が児童生徒と不適切な関係になることを防止することにある。実際に、教師が生徒のLINEの連絡先を聞き出し、みだらな関係に至った事件は少なくない。

 しかし、こうした事件はそもそも当該教師の人格こそが原因であって、メールやSNSという連絡手段が原因ではない。むしろ、メールやSNSには、教師の業務の効率を上げる効果があり、電話よりも記録や証拠として価値が高い。また、児童生徒も教師に悩みや相談事をする際、直接口頭でするよりも、メールやSNSのほうが伝えやすい。公的団体がいじめの電話相談をやってもあまり電話はかかってこなかったが、LINE相談にしたらとたんに相談件数が急増したという例もある。