現場は和やかだし、ヨン・サンホ監督ととても仲良くなりました
実はヨン・サンホ監督には脚本を読む前にお会いしたんですが、監督のことがとても好きになったんですよ。監督の価値観やビジョンにはとても共感しました。例えばヨン監督は撮影を早く終えることで有名なんですが、どうしてなのか不思議だったんです。監督だったらもっと欲を出して当然なのに。
それで早く終わった日に理由を聞いたら、『映画は共同作業なので、私にとって一番大切なのは、みんなが幸せであることです。仕事が早く終わった方が、みんな幸せですよね』と言われました(笑)」
実際、アニメーション出身のヨン監督は、頭の中に完璧に映像ができ上がっているので、現場はとてもやりやすかったそうだ。
「頭の中にビジョンが明確にあるので、1秒でも、2秒でも必要じゃないものは絶対に撮らないんです。100%、自分で描いた絵コンテ通りに撮る。たとえば『あっ』って顔を撮ったら、すぐ『カット!』の声がかかる。ここからここまでという感じで、細かく撮るのが独特でした。
また、役者に演技指導することに慣れていない方なので、とても遠慮がち。でもアニメでは自分が演技をしたものを描き起こしていたので、監督は今でも自分で演じてみせちゃうんですよ(笑)。僕はとてもやりやすかった。現場は和やかだし、監督ととても仲良くなりました」
「メソッド演技は出来ないんですよ(笑)」
感情が途切れてしまうので細かく撮るのを嫌がる俳優もいるが、彼は逆に役柄を全く引きずらないという。毎日、撮影前に必ず行うルーティンも無い。「寝られるだけ寝て現場に行っちゃうんです。すぐ演技に入れちゃいます」とコミカルな仕草で笑う。ロバート・デ・ニーロやダニエル・デイ・ルイスのように、役になり切って生活したり、激しい減量をしたりというアプローチはしないようだ。
「僕は食べたいものがたくさんあるから、メソッド演技は出来ないんですよ(笑)。それに、本当にメソッド演技をしている方がいるのか、僕は懐疑的なんです。この前も、いかにもメソッドにこだわりそうなアメリカの俳優さんが、インタビューで『もしそうしたかったとしても、子供を学校に送り迎えしなきゃいけないから出来るわけがない』と答えていて、そうでしょう?と(笑)」
◆ ◆ ◆
インタビュー後編では、40代に向けての意気込みや、海外進出に挑戦する理由が語られる。そして、インタビュー中にちょっとしたハプニングも……。続きは発売中の『週刊文春WOMAN 2020秋号』でご覧ください。
text:Ayako Ishizu
Gang Dong-won(カン・ドンウォン)
1981年釜山生まれ。大学在学中からモデルとして活動し、パリコレにも出演。2003年ドラマ「威風堂々な彼女」で俳優デビューすると瞬く間に人気を集める。翌04年の『オオカミの誘惑』『彼女を信じないでください』以来、主演映画が毎年のように公開される。代表作に映画『義兄弟 SECRET REUNION』(10)、『群盗』(14)、『MASTER/マスター』(16)など。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』
人間を凶暴化させる謎のウイルスの感染爆発で、韓国の国家機能が停止して4年後。荒廃したソウルに、元兵士ジョンソク(カン・ドンウォン)がある任務を果たすために戻ってくる。生き残りの母子とともに朝鮮半島からの決死の脱出を図る。2021年1月1日(金) TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー。
【週刊文春WOMAN 目次】香取慎吾 横尾忠則、三谷幸喜との連続対話/岡村靖幸×オードリー・タン/稲垣吾郎×阿部智里/チョ・ナムジュ×海野つなみ/松本隆の韓流ドラマ論
2020 秋号
2020年9月24日 発売
本体500円+税