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白石隆浩被告 座間9人殺害事件は「被害者が望んだ承諾殺人」だったのか

被害者からは直前に「生きよう」というメッセージも

2020/10/07

genre : ニュース, 社会

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「いろいろ考えた結果、生きて行こうと思います」

 また、Bさん(女性、当時16)は、学校生活での悩みがあった。弁護側によると、課題の提出が苦手だった。そのため、中学時代から、学校と母親から注意を受けて、叱責をされていた。そのため、学校へいくのを嫌がるようになり、早退や欠席が多くなっていた。

 中学2年生の頃、「部活ノート」を提出することになるが、やはりなかなか書けず、出せないでいた。学校へ行けないという思いが強くなり、出したとしても、先生から「本心を書いてない」と言われるようになる。そんな中で、学校に行くふりをして、家の中で身を隠していたことがあった。Bさんがいた付近には、犬のリードがあったため、自殺をしようとしたのではないかと母親は考えた。Bさんにとっては、提出物が出せない悩みは、死にたいと思うほどのことだったようだ。このことで、学校側は特別支援の対象にした。

 2017年4月、高校に入学したが、入学前の課題提出がまた難関になった。母親に強く指摘されると、家出をしたこともある。1学期の成績は「赤点」だったが、その原因も、提出物を出せていないことだったという。このことで、夏休みは補習をすることになるが、夏休みが明けようとする時期になって、再び提出物が問題になった。そんなときに、Bさんは自殺系サイトを閲覧した。さらに、Twitterに「関東で一緒に死にませんか?」と投稿した。

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 その投稿がきっかけで白石被告とつながる。白石被告が「首吊りですか? 飛び降りですか?」と送ると、Bさんは「首吊り」と返事をしている。また、日程に関しても、Bさんは自ら提示をした。そんなことから弁護側は「承諾があった」と主張する。

9人が殺害された座間市内のアパート ©渋井哲也

 一方、検察側によると、Bさんは殺害される当日、「いろいろ考えた結果、生きて行こうと思います」とLINEをしている。白石被告は「しばらく家にいたほうがいい」と言い、居場所がわからないように、携帯電話を海に捨ててくるように伝えた。Bさんは、海には捨てず、海近くの駅のトイレに放置した。言いなりになっていないことを含めれば、承諾も同意もしてないと、述べた。

「オレ、これからは生きていきます」

 Cさん(当時20)は男性だ。弁護側によると、小学校高学年のときに「高機能自閉症」と診断された。人の気持ちを汲み取るのが苦手で、対人関係に悩みがあった。そんなこともあり、高校卒業後は、知的障害者の支援施設で働くようになった。しかし、体力的にも、精神的にもきつい仕事であり、利用者から暴力を受けることもあったようだ。

 恋人との別れも経験した。事件の2ヶ月前の2017年6月、2年間付き合っていた彼女から別れを告げられた。翌日、その女性にあてた遺書を書き、睡眠薬を過量服薬した。結果、救急車で運ばれることとなり、強制入院する。仕事は7月末まで休むことになったが、退院してすぐに、その女性を駅で見かけたことで、電車に飛び込もうとしたことがあった。