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「まるで薬師丸ひろ子の歌の世界なんだ」韓流歴20年の松本隆が“Wの悲劇”を感じたトップ女優とは

2020/10/19
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ポン・ジュノとペ・ドゥナにハマった20年前

松本 そうだ、ペ・ドゥナと食事をしたことがあるよ。彼女とは2度会ったことがあって。僕は、ポン・ジュノの長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』を観て大好きになったんだ。

 ポン・ジュノもいいけど、ペ・ドゥナもすごいと、当時、川勝正幸君(注:映画や音楽に詳しい編集者。12年没)に言ったら、それまで韓国に興味のなかった彼が夢中になって、日本でのペ・ドゥナ人気も一気に上がった。だからたぶん、僕はその餌付けをしたと思う(笑)。

ペ・ドゥナには作詞も ©BENAINOUS/SANCHEZ/Gamma/アフロ

——確かに、当時の文化系男性陣はこぞってペ・ドゥナを推していました。

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松本 それで、是枝裕和監督がペ・ドゥナの映画『空気人形』を撮ったときに、銀座ウエストのシュークリームを持って差し入れに行ったんだ。深川の現場へ。

——そういえば松本さん、ペ・ドゥナが主演した、山下敦弘監督の映画『リンダ リンダ リンダ』から生まれたミニアルバムで作詞を担当されていましたよね。

松本 女子高生のペ・ドゥナが高校でバンドをやる話なんだけど、彼女のバンドがつくった架空のアルバムという設定でね。僕は3曲詞を書いた。ペ・ドゥナが歌ってくれたんだ。

——ペ・ドゥナのどこに惹かれたんですか?

松本 やっぱりポップなんだ、あの人は。生き方も存在もすべてが。

——今はアメリカやヨーロッパでも活躍しています。

松本 それを言えば、ポン・ジュノも。それこそ、当時は僕ひとりでポン・ジュノ、ポン・ジュノと騒いでた。100人いたら99人、「そんな人知らない」と言われたのにね(笑)。

カンヌとオスカーのW受賞は64年ぶり。『パラサイト』のポン・ジュノ監督(右)とソン・ガンホ ©新華社/共同通信イメージズ

——いまやアカデミー賞監督。世界のポン・ジュノ。

松本 自分の先見の明にちょっと感動した(笑)。

※インタビュー後半では、「『愛の不時着』どころじゃない」「観ないと人生の損」と激賞するドラマシリーズの話題や、「木の葉のスケッチ」「木綿のハンカチーフ」「スニーカーぶる~す」「ルビーの指環」「瑠璃色の地球」などへの言及も。続きは発売中の『週刊文春WOMAN 2020秋号』でご覧ください。

text & photograph:Izumi Karashima


※1:映画『八月のクリスマス』(98) 不治の病の写真館店主の青年(ハン・ソッキュ)と駐車違反取締員(シム・ウナ)の切ない恋。翌年の『シュリ』とともに、韓流ブームの萌芽に。シム・ウナは今や代議士夫人。

※2:映画『JSA』(00) 名匠パク・チャヌク(代表作に『オールド・ボーイ』『お嬢さん』)の出世作。軍事境界線上にある共同警備区域で睨み合う南北兵士が友情を育むが……。北のベテラン軍人はソン・ガンホ、南の兵士は若きイ・ビョンホン。

※3:ドラマ『冬のソナタ』(02) 交通事故で亡くなった初恋の彼と瓜二つの男性が仕事相手として現れたら——。出生の秘密、記憶喪失、敵役の意地悪女、不治の病などの韓流キーワードが詰まった珠玉のラブストーリー。03~04年NHKで放映。04年に主役のペ・ヨンジュンが来日すると、羽田空港に3500人以上のファンがお出迎え。『北の国から』ファンでもあるユン・ソクホ監督の”四季シリーズ”はウォンビン、ソン・ヘギョ、『愛の不時着』のソン・イェジンなどスターが多数輩出。

※4:ドラマ『若者のひなた』(95)『愛の群像』(99) ヨン様の初期作品。『愛の群像』で打算的に付き合う社長令嬢は日本デビュー前のユン・ソナ。

※5:ドラマ『砂時計』(95) 最高視聴率64.5%。1980年の光州事件をドラマとして初めて扱った社会派メロドラマ。かつては韓流ファンになると古株ファンから「砂時計という金字塔的作品があってさ」と昔話をされるのが常だった。”お嫁さんにしたい女優No.1”だったコ・ヒョンジョンは、近年は『善徳女王』(09)のミシルなど悪女役もお見事。

まつもとたかし/1949年東京都生まれ。70年にロックバンド「はっぴいえんど」のドラマー兼作詞家としてデビュー。解散後は専業作詞家に。手がけた曲は2000曲以上におよぶ。今年で作詞家生活50年。

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