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現実的なところに落とし込んでいこうというトップ人事の所作

 その結果として、東京大学総長を決めるにあたり参考にする総長第二次意向投票(本選とも揶揄される)では、宮園さんを外した候補者3名での投票となりました。さまざまな要望書や怪文書が飛び交いつつも、なんと過半数の圧倒的得票を藤井輝夫さんが獲得し、次点は「白票」という事態となって、なかなか大変なことになったわけであります。

次期総長予定者の藤井輝夫理事・副学長が会見 | 東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0508_00185.html

 藤井輝夫さんが東京大学総長に選ばれることで、河川敷で殴り合いをした高校生同士が川の土手で寝ころびながら「お前、強かったな」「お前もな」という友情が芽生えて完結する話になるとは思えないですし、恐らくこれから事後検証をするぞというところで選考会議の録音が消されていることが判明しました。いや、まあ、みんな全文持ってるし知ってるんですけれども、個人名も資質についても全部あけすけに話し合ってきたから一応消しておこうか、という話なのでしょうか。そもそも、大学内部で人物評価を選考委員が議論している内容を流出させるというのは、ちょっと考えれば分かる通り個人情報の塊であるばかりか普通に犯罪です。

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東大総長の選考、録音を消去 学内から批判の非公開会議(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASNB57JJ9NB5UTIL04R.html

 まさに全カトリック教会の最高司祭たるローマ教皇を枢機卿による投票で選出するような、現代のコンクラーベみたいな状況になっておるわけですけれども、企業でも国立大学でもいかなる組織でもトップ人事は往々にして実績と人望と情実が絡む中で何とか現実的なところに落とし込んでいこうという所作でもあります。

©iStock.com

ガースーと竹中平蔵さんで思い切った改革でもいかがでしょうか

 結果的に、藤井輝夫さんが有無を言わさぬ過半数票獲得で、そのまま総長就任となり、これが国立大学経営の改革にいたる経過点となればいいなと思いつつも、いまや国際的な大学ランキングでも凋落を辿る日本の高等教育の最高峰である東京大学がこんな大騒ぎでいいのか、というのは気にならざるを得ません。

 もうね、一度総長人事にガースー介入のもと竹中平蔵さんでも招聘して大爆発して黒焦げになった竹中平蔵さんが「駄目だこりゃ」といって崩壊した安田講堂を墓標にするぐらいの思い切った改革が必要なんじゃないかと思いますけれども、いかがだったでしょうか。

 現場からは以上です。

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