通報のきっかけはツイッター
ある年、関東近郊に住む20代男性が、沖縄に生息する天然記念物のキシノウエトカゲを飼っているという情報を警視庁がつかんだ。
「なぜ違法飼育がバレたのかというと、本人がツイッターにキシノウエトカゲを飼っている様子の写真をアップしていたから(笑)。見せびらかしたかったんでしょうが、それを見た人たちが警察に通報したのです」
ツイッターでの“通報しました”の案件が、ガサ入れにつながったのだ。現場に踏み込むと、飼育者は実家で親と住み、多くの爬虫類を飼っていた。
「ガサ入れではキシノウエトカゲは見つからず、本人の言い分では、ツイッターで炎上していたたまれなくなったので、沖縄の捕獲した場所に放してきたということでした。証拠として沖縄行きの航空券も出してきました。他にもいろいろ飼っていてネットで売買しているようでしたが、違法性のない動物ばかりでした。
なので、帰ろうと警察車両に乗り込んだら、1人の警察官が追いついてきて、庭にカメがいる囲いを見つけたので『ついでなので見てもらえませんか』と。それでクルマから降りて見に行ったんです」
囲いのなかではヤエヤマイシガメが飼われていた。これも沖縄産だが、ペットとしての飼育が認められているカメである。
国指定の天然記念物に「中国産です」
「そのときに囲いの隅に木箱を見つけたんですね。開けたら、セマルハコガメが4頭出てきた。これは沖縄に生息している国指定の天然記念物で、ペットとしては飼えません。
ただ、セマルハコガメは台湾や中国でも生息していて、それを輸入して飼育するのはOKなんです。本人に聞いたら、案の定『中国産です』とマニュアル通りの供述をした。しかし、沖縄の八重山でキシノウエトカゲを密猟し、ヤエヤマイシガメも捕獲しているわけで、状況から考えて中国産とは思えない。『どう見ても沖縄産だと思います』と警察官に進言して確認してもらったところ、『はい、沖縄で捕まえました』とその場で自供した」
ガサ入れに入ったのが警察官だけだったら「中国産」で押し切られたかもしれない。
「警察官が相手だと、飼育者の中には素人だと思って舐めてかかり、『これは飼ってもいい別の種だ』などと言い逃れようとする人がいる。だけど、爬虫類業界は狭く、私の顔と名前は知られているので、私がいると嘘が通用しないと思い、言い逃れをあきらめる」
白輪氏がガサ入れに同行するようになって否認案件が減った、という警察官もいるそうだ。