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都市に潜むニシキヘビ、巨大トカゲ、ワニ……ガサ入れで押収された「危険なペット」たち

「大人しくて咬まない」は人間の思い込み

2020/10/17
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「たかがカメで」

 現在はペット飼育禁止になった動物でも、規制前から許可を取って飼っていた場合は、その個体については一世代限り飼育を認められる(繁殖は不可)。しかし、許可を取らずに飼っていた人の場合、そのまま隠れて飼い続けるケースがあり、近年はこうした事例の摘発が増えている。

 白輪氏は数年前、西日本へカミツキガメの飼育者のガサ入れに同行した。前述した通り、カミツキガメは14年前からペット飼育は禁止である。

「このときの飼育者は30代男性で、親と小学生の子供と3世代で同居していました。そのときは外でガヤガヤやっていたので、飼育者の父親が何事かと外へ出てきた。『警察の者ですが、実は息子さんが~』と告げると、雰囲気がガラッと変わりましたね。息子を守らなきゃと思うんでしょう。『カメを飼うのがそんなに悪いことなのか』とけっこう揉めました。過去には『たかがカメで』と言った方もいました。

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特定外来生物のカミツキガメは15年前からペット飼育は禁止。最大で全長45センチくらいまで成長する。ワニガメのように指を咬みちぎるほどではないが、怪我はする ©️清水典之

 当の飼育者は、まったく悪気がなく、なんでもないことのようにカミツキガメを飼っていました。禁止であることは知りながらも、ズルズル飼い続けてきたんです。本人は言い逃れもせず、あっさり認めましたけどね」

 違法飼育者の中には、飼っている時点では罪の意識を感じていないケースも多い。動物が逃げ出して大騒ぎになったり、他人に危害を与えたりして初めて後悔する。そこが違法飼育のやっかいなところである。

「爬虫類のイメージをクリーンにしたい」

 ところで、警察がガサ入れで押収した動物は最終的にどうなるのか。

「密輸動物の場合は、経済産業省の管轄になり、しかるべき動物園に振り分けられます。それ以外の国内法の事案では、警察がウチや他の動物園などに委託保管という形で預け、裁判が終わると検察庁から継続飼育を依頼され、払い下げられることが多い」

 写真のセマルハコガメは、前述したガサ入れで押収されたもの。メガネカイマンは、ガサ入れには同行していないが、関西で押収されたものを委託保管で預かっている。

セマルハコガメ ©️清水典之
関西の警察が押収した全長約150センチのメガネカイマン。動物愛護管理法の改正で、2020年6月1日からペットしては飼えなくなった ©️清水典之

 違法飼育されていた動物のなかには、正規ルートでは絶対に入手できない希少な動物もいる。そのため、白輪氏は業界内で「希少動物を手に入れるためガサ入れに協力している」と陰口を叩かれることもあるという。

「個人の愛玩飼育はダメでも動物園では飼えるという動物は多いので、押収されてくる爬虫類のほとんどはすでにここの園にいます。だから、本当に珍しいと思うような動物が来ることは極めて希です。むしろ飼育にはお金と手間がかかるので、これ以上持ってこられても困るという動物ばかりです。それでも捜査に協力しているのは、爬虫類業界をクリーンにするため。違法な希少動物を飼いさえしなければ、捜査も受けないわけですからね」

メガネカイマン ©️清水典之

 今、違法飼育の摘発でもっとも多いのが、やはり爬虫類だという。爬虫類飼育による事故を減らすだけでなく、「業界を健全化して、爬虫類のイメージをクリーンにしたい」というのが白輪氏の願いだ。

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