上場前から大騒ぎだった。

 10月15日、「防弾少年団(BTS)」の所属事務所「Big Hit Entertainment(BHエンタテインメント、以下BH社)」がKOSPI(韓国取引所)に上場した。初値は公募価格の2.6倍をつけ、時価総額は8兆8169億ウォン(約8800億円同日15時時点)。韓国の3大音楽事務所の時価総額を合わせたものをはるかに超え、韓国最大手の音楽事務所に躍り出た。

 創業者、パン・シヒョクCEO(最高経営責任者)も一気に株式富豪へひとっ飛び。エンターテインメント界最高の株式富豪となり、全体でも現代自動車グループ副会長を抑えて8位となった。ちなみに不動の1位はサムスン電子のイ・ゴンヒ会長だ。

ADVERTISEMENT

 今さら言うまでもないが、 BH社をここまで大きくしたのは、世界で人気のアーティスト「BTS」だ。

グラミー賞授賞式(2019)でのBTS ©AFLO

入隊延期が認められるよう兵役法改正も?

 この8月に英語でリリースした新曲「Dynamite」では韓国人アーティストとして初めて米ビルボードチャートHOT100で1位を記録し、最近、配信したオンラインライブでは1億1400万回の応援クリックを集めるなど話題は尽きない。

 韓国では、BTSはこの10年間で60兆ウォン(約5兆5000億円)、今年だけで6兆ウォン(約5500億円)の経済効果をもたらしたと伝えられている。

 韓国では例えばオリンピックで金メダルを獲得するなど、スポーツで功績を残した選手は兵役を免除されるが、「BTS」もその大衆文化的功績から免除にすべしという発言が与党議員から出て、兵役に敏感な韓国では侃々諤々となった。その後、大衆文化・芸術的功績が認められる者には入隊延期が認められるよう兵役法改正が進められていることが発表され、もはや、いちアーティストを超えた存在になっている。

 韓国の3大芸能事務所は、「2PM」や「TWICE」を生み出した「JYPエンタテインメント(JYP社)」、「BoA」や「東方神起」、「少女時代」を輩出した「SMエンタテインメント(SM社)」、「BIGBANG」、「BLACKPINK」が所属する「YGエンタテインメント(YG社)」といわれ、世界で活躍するK-POPアーティストのほとんどはこの3大事務所から生まれてきた。

TWICEのメンバー ©AFLO

 JYP社は、公開オーディション「虹プロ(Nizi Project)」で一気に日本での知名度を上げたJ.Y.Parkことパク・ジニョンJYP社CCO(クリエイティブ総括責任者)が創業した事務所で、パンBH社CEOは新人作曲家として入社した同社の初期メンバーだ。JYP社はマネジャーを含め3人でスタートしたという。パクCCOは、パンBH社CEOについて自著でこんな風に語っている。