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「隠れトランプ」は4年前より増えている?

 実は、前回の大統領選挙より今回の方が「隠れトランプ」は多いのではないかと思われている。それは、トランプのこの4年間の政策実行力によるものだ。

 日本から見ていると、トランプの人種差別的な物言いが注目されるが、政策を一つ一つ検証していくと違った側面が見えてくる。トランプは「自分の支持者のため」の政策をブルドーザーのように実行している。

 減税がシンボルだったレーガン大統領以上の減税パッケージを実現し、1995年までに議会で可決されながらこれまでの大統領が手を付けられなかった在イスラエルのアメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転も現実のものとした。公約通りTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からもパリ協定からも離脱し、自動車関税の撤廃基準を厳しくした新NAFTA(北米自由貿易協定)も実現した。

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 中国に対しても「アメリカの先端技術を盗んでGDP世界一になるのは許せない」と言わんばかりに関税をかける。中国の「デカップリング(切り離し)」をキーワードに、米中冷戦へまっしぐらのようにも見える。対中国包囲網を作るべく米日印豪で「インド洋=太平洋」を守る枠組み、クワッドを形成し、台湾への支援の手も差し伸べる。

支持者に囲まれて演説をするトランプ大統領(10月18日) ©getty

 シェールガスの規制も緩和し、今や、アメリカは世界一の産油国。ガスも石油の価格もアメリカがリーダーシップを握るほどになっている。

 さらにトランプ大統領が誕生してから株価は堅調。新型コロナウィルスの感染拡大でパンデミックになっても、アメリカの株価は底堅かった。失業率も改善の一途をたどっていた。ギャラップ社が10月14日に発表した世論調査でも2020年9月時点で、55%のアメリカ人が「4年前よりも暮らし向きが良くなった」と回答している。しかも、54%の人がトランプの経済政策に賛成している。

 支持者に向けた公約を果たせば果たすほど、その“陽”の部分だけに注目してトランプ支持者は熱狂する。一方で、多数派の「反トランプ」陣営は“陰”の部分への批判を強める――という構図を繰り返してきた。

 トランプが実現したことを紐解いていくと、再選を見据えてトランプが打ってきた冷静な手立ては怖いほどだ。この冷徹な目を持っていなければ、ビジネスマンからテレビ番組を持ち、そのカリスマ性で共和党の大統領に当選することはできないだろう。トランプを一般人の物差しでは測ることはできないのである。

 トランプの言葉遣いは下品だ。しかしそこに引っ張られてしまうと、アメリカを見誤ることになる。