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大統領選挙の行方は?

 8月の終わりまで、私は「トランプ有利」と踏んでいたが、9月に入って前回は存在しなかった3つの要素が急遽加わって、一筋縄ではいかない状況となった。

 1つ目は、リベラル派の最高裁判事ルース・ベイダー・ギングバーグの死である。今、トランプが指名するエイミー・コーニー・バレット氏が最高裁の判事に就任すると、保守派6、リベラル派3となって、最高裁のバランスは崩れる。こうなると議会で通過した法案に大統領が署名しても、それを共和党が気に入らなければ、憲法違反として最高裁に訴えることで、全て反故にできるのだ。

 その危機感から、ギングバーグ判事の死後、バイデン陣営の集金力は凄まじい。トランプに資金面で圧倒的に劣勢だったのが、9月は100億円単位の差を付けてトランプを圧倒していると報じられている。

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 2つ目は、トランプ自身の新型コロナウィルスの感染である。トランプは5日で回復すると、2週間目には症状も消え、自己隔離から出てくるまでに回復した。元気さをアピールし、「コロナを恐れるな。俺も治った。治療薬を無料にする」と声高に主張した。

コロナ感染が発覚した当初のトランプ大統領(10月2日) ©getty

 一方、バイデンは対照的だ。3月から6月までデラウェア州の自宅で自己隔離を行い、今も徹底した対策をとっている。記者がそばに寄ろうとすると、スタッフが「2メーター以上離れて」と阻止する。バイデンの遊説は全員がマスクした上で、2メートルの社会的距離を保つというほどの徹底ぶりだ。

 コロナの怖さについて身をもって知ったトランプは、むしろ吹っ切れたようにコロナに対して強気になった。治療のために投与されたステロイドの影響でハイになっているのではないかと言われているほどだ。アメリカの報道は一様に、このトランプのコロナ政策が致命傷になりそうだと報じ、実際にトランプは接戦州での支持率をさらに下げている。

 それでも「マッチョなコロナ政策」を選び続けるトランプの狙いは、凡人には計り知れない。感染者が増えることが前提のトランプの政策に、声高に賛成とは普通言えない。しかし、口では「バイデンの方が安心」と言っても、経済最優先と考える人はいる。ここにも「隠れトランプ」が生まれる土壌ができて、選挙情勢を複雑にしている。