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家族の未来と生殖の未来
確かに「家族」は徐々に姿を変えつつある。1950年代の日本は生涯未婚率が男女ともに1%台だったが、2015年には男性23・4%、女性14・1%にまで高まっている(注28)。この生涯未婚率は2035年には男性30%、女性20%になると予測されている。つまり結婚が「当たり前」ではなくなるということだ。
このような時代に、特定の形の「家族」だけを「当たり前」と考える必要はない。男同士の家族がいてもいいし、精子バンクや養子制度を用いて望んでシングルマザーになる人が増えてもいい。これまでの「家族」という言葉が通用しないくらい「家族」は多様化していくはずだ。
それでも、母子の結びつきが一番根強く残るだろう。出産が機械に代替される目処は立っていない。つまり、女性が子どもを産むという意味において、母子の結びつき自体は希薄になりにくい。
ただし、テクノロジーが家族のあり方を根本的に変えてしまうことはあるかも知れない。たとえばiPS細胞は、原理上は皮膚細胞から精子も卵子も作ることが可能だ。研究が進めば、高齢同士や同性同士のカップルでも子どもを産めるようになるだろう。
場合によっては子宮は代理母に頼むことになるが、女性を悩ませる出産や育児に、厳密な意味でのタイムリミットがなくなるのだ。また同性婚に反対する根拠になってしまった「生産性」の問題もクリアできることになる。