普遍的な「家族」像など存在しない
それは、ある時代を理想と考える人には「家族崩壊」と見えるかも知れない。だが日本史を振り返る限り、普遍的な「家族」像など存在しない。「家族崩壊」を唱える人が恐れるべきは、自身の頭の崩壊である。
注17 ルイス・フロイス『ヨーロッパ文化と日本文化』岩波文庫、1991年。
注18 本郷和人『日本史のツボ』文春新書、2018年。
注19 ゲイリー・P・リュープ『男色の日本史』作品社、2014年。
注20 藤原頼長や藤原兼実の日記が、白河天皇や鳥羽天皇について言及している。
注21 『平治物語』などによると、後白河天皇は愛人だった藤原信頼に異例の出世をさせたという。しかし信頼は最後は政争に敗れ、後白河にも捨てられ、京都の六条河原で斬首される。28歳で命を落とした「傾城の美男子」として伝説化されているが、NHK大河ドラマ「平清盛」ではお笑いタレントの塚地武雅が信頼を演じ、ファンを落胆させた。
注22 1686年に発行された『好色五人女』からのフレーズ。26歳まで女性と性的関係を持ったことのない主人公が、若い女性と関係を持った時に至った心境である。彼はその女性と結婚する。
注23 明治民法では家のトップを「戸主」、それ以外のメンバーを「家族」と定義するが、本稿ではその区別を用いていない。
注24 横山文野『戦後日本の女性政策』勁草書房、2002年。
注25 下夷美幸『日本の家族と戸籍』東京大学出版会、2019年。
注26 1930年代から横ばいだった女性労働力率は、1960年代に大きく減少する。特に25歳から29歳に限定すると、1960年は56・5%あった労働力率が1970年には45・4%、1975年には42・6%にまで低下している(総務省統計局「労働力調査」)。
注27 「勉強不足」と呼ぶことはできる。大した歴史もないものを「伝統」とありがたがる人々は多い。それをあざ笑う本としてパオロ・マッツァリーノ『歴史の「普通」ってなんですか?』(ベスト新書、2018年)がある。30年も続けば「輝かしい伝統」になってしまうことが多いらしい。
注28 生涯未婚率は、50歳以上の男女のうち結婚歴のない人の割合。最近では単に「50歳時未婚率」とも言う。
※本稿は古市憲寿『絶対に挫折しない日本史』(新潮新書)を元に再構成しています。