ブランド屋さんのビジネスの上で踊らされている
そして、これらの問題は森田朗さんが指摘するように、戦後の我が国は高度成長を経て「日本中、どこでも均一に成長し、同じ方向に向かっていくように」頑張った結果でもあり、いわば戦後復興のビジョンが75年経ったいまも右肩上がりの幻想のまま各地域の命題となり、同じ指標で47都道府県がランキングをつけられ、競わせられている問題の露顕として表出したわけです。
北海道や東京都とランキングで競わせられる栃木県ほか日本の地方は、独自の魅力を磨き上げてもこれらの地域のブランド力を上回ることなどまず不可能です。その地域なりに、幸せな社会を作り、尖った産業、人を呼べる文化、素晴らしい観光資源を作ることにこのブランドランキングは資するのか、という話です。
戦後75年、このままでいいのか日本の「戦争総括」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61681
いわば「栃木や茨城についてよく分からないから嫌い」という消費者がいたとして、その消費者に振り回されてブランド力向上だ、県の魅力の発信強化だ、とやることはブランド屋さんのビジネスの上で踊らされているだけではないでしょうか。むしろ、自分たちのできることや商品価値を見据えて、例えば観光資源をより満足度の高いパッケージにどう仕上げるのかとか、名産品が広く受け入れられコロナ後も品質に見合った高い価格で売買されるにはどうすればよいかといった方向に知恵を絞らないと、ブランド最低県という風評被害めいたレッテルを貼られて衰退させられていくんじゃないかと思うんですよね。
本来の栃木の魅力をどう磨くか
統計や数字にこだわりのある人は、特に4位までは有意にブランド力がある地域で、それ以下はほとんど誤差レベル、みんな近隣県のことぐらいしか知らないので似たような数字が並ぶミクロな世界になっている調査であることはしっかりと把握するべきです。
繰り返しになりますが、国民に広くアンケートを取ったって、行ったことのない興味のない都道府県なんて低スコアになるのは当たり前なんですよ。総合スコアで見て北海道だけ60超えているのに26位の富山県17.1から47位栃木県11.4まで、下位半分は5.7しか差がないという意味のない本件結果を見て右往左往するよりは、本来の栃木の魅力であるU字工事や餃子、日光東照宮、農産品など光るものをどう磨くか思案したほうがいいんじゃないでしょうか。
INFORMATION
ついにこの日が来てしまった……。文春オンラインの謎連載、特にタイトルがあるわけでもない山本一郎の痛快ビジネス記事が待望の単行本化!
その名も『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』。結婚し、出産に感動するのもつかの間、エクストリーム育児と父父母母介護の修羅を生き抜く著者が贈る、珠玉の特選記事集。どうかご期待ください。