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安倍前首相の「再々登板」を期待する声

 古くは1979年の大平正芳元首相と福田赳夫元首相らによる「40日間抗争」(自民党が分裂状態になるほどの党内抗争で、大平内閣は衆議院を解散し、初の衆参同日選挙に打って出たが、選挙中に心筋梗塞による心不全のため急逝した)がありましたし、中曽根康弘内閣の時には、前任の鈴木善幸元首相らとの対立が鮮明化し、鈴木氏が中曽根首相の総裁再選を阻止するために「二階堂(進)擁立構想」を立てたこともありました。安倍晋三前首相がどう思っているかはわかりませんが、自民党の歴史には必ず「首相経験者の現首相に対する嫉妬」が顔を出すのです。

安倍晋三前首相と菅義偉首相 2019年、祝賀御列の儀 Ⓒ文藝春秋

 特に安倍前首相には早くも党内で「再々登板」を期待する声が出始めています。さらに安倍前首相は、菅政権発足直後の9月18日に読売新聞のインタビューが掲載されたのをはじめに、日経新聞、産経新聞の取材にも応じました。首相を辞めた直後に大手メディアの取材に応じた政治家を私はこれまで知りません。読売新聞のインタビューで特に気になったのは「今後の政治活動は」と問われて、安倍氏が「基本的には球拾いをしていく。首相から求められれば、(外交特使など)様々なお手伝いもしたい」と答えたことです。

中曽根康弘元首相(2008年) Ⓒ文藝春秋

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 キーワードは「球拾い」です。これは中曽根元首相が、竹下登内閣が発足した時に「外交の球拾いをしたい」と述べたこととリンクします。中曽根元首相は結局「球拾い」では満足せず、再登板に意欲を見せるようになり、時が経つにつれ、「拾った球」を持って、マウンドに上がりそうな勢いを取り戻していきました。結局はその後、リクルート事件が起きて、再登板はかないませんでしたが……。